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■「彼岸の果て」のはなし
 今日は、2022/3/24。3/18から始まった7日間の彼岸の期間の最後の日です。
 少し前(2021/9/25以前)まで、この彼岸期間最後の日のことを

  彼岸明け

 と書いていました。
 雑節の一つとなっている「彼岸」の期間を計算する、Web こよみのページの
 雑節計算のページ

  暦の雑節 http://koyomi8.com/zassetsu.php

 でもこの日を「彼岸明け」と書いていたのですが「彼岸には明けはない」と
 いうことを知って書き直しました。

◇彼岸は「明けない」の?
 「NHKことばのハンドブック」(第2版、NHK出版)

 という本の「入り・明け」という項目に次のような解説がありました。

 【入り・明け】
 「寒の入り・寒の明け」
 「土用の入り・土用の明け(一般には夏の土用だけ)」
 「梅雨入り・梅雨明け」と使う。
  ただし、「盆の入り(明け)」は使わない。
  また、彼岸の場合は「入り」は使うが、「明け」は使わない。

 とありました。おっと、お盆についても「入り・明け」は使わないと。
 ただし、お盆の方については、以前気になって調べたことが有り、NHK放送
 文化研究所のWEBサイトの「放送現場の疑問・視聴者の疑問」というページ
 に

  「期間が3、4日と短いので「盆の入り(明け)」は、放送では使わない
   ことにしています。」
  (8月の盆は「月遅れの」盆?
   https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/034.html )

 こちらの方は、期間が短いので「放送では使わない」と言うことで、その表
 現が正しいのか間違っているのかといった問題では無いようです。また、期
 間の長さ問題なので「入り」も「明け」もどちらも使わないということなの
 で、納得もいくのですが、彼岸の方は違います。

  彼岸の場合は「入り」は使うが、「明け」は使わない。

 と、「明け」だけ使わないとあるので、これは何か理由がありそうです。
 しかし、ここまで読者(私のこと)の注意を引いておきながら意地悪なNHK
 は、その理由を書いておいてはくれませんでした。
 ああ、このままでは気になって夜も眠れない・・・こともないけど。

 眠れないほどではないにしても気になって何冊か、手掛かりになりそうな本
 のページをめくってゆくと、ありました!

◇彼岸に「明け」はない?
 本日の暦のこぼれ話のタイトルそのままの『彼岸に「明け」はない?』とい
 う小見出しのついた本が見つかりました。

  季節の道草事典 (倉嶋厚著、東京堂出版刊行)

 あ、お天気博士、倉嶋先生の本ですね。
 読んでみると倉嶋先生も私と同じ「NHKことばのハンドブック」の記述を読
 んで疑問に思われたようです。皆、同じですね。

 私と違うところは、気になってNHKの用語担当の専門家にお尋ねなさったこ
 とです。流石!(ま、私だと取り合ってもらえなかったかもですけど)。
 件の担当者が言うには、

 『彼岸の本来の意義は、かなたの岸の「悟りの境地」に到達することであり
  そこからさらに明けてしまうことはない。』

 のだとか。そう言われてみれば確かに、悟りにの境地にたどり着いたのに
 その状態から「明ける」必要は無いですね。ある意味、論理的?
 とはいってもね、明けないはずの彼岸がまた半年後にはやってくることを
 考えると、現実問題として存在する彼岸の期間の終わりをどう表現するべ
 きなのか、こよみのページのかわうそ@暦の立場では悩ましいところ。

  彼岸の期間の終わり

 と書いてしまうのがいいのかな? でもなんか、無味乾燥でつまらないよ
 うな気がしちゃうな。困っちゃうな。
 文才無く困ってしまうかわうそとは違う倉嶋先生はといえば、

 『もっとも、人は毎年、春と秋の二回、彼岸に到達しようとしますから、
  彼岸を目指して煩悩の川を渡り続けるのが人の一生であり、その意味で
  も「明け」はないのかもしれません。』

 と解説の文章を締めくくっていました。流石・・・。

 この説明通りだとすれば、春の彼岸の最後の日である今日は、秋の彼岸へ
 向けて歩み出す第一歩の日にもなるのでしょうかね。
 とはいっても、やはり彼岸の期間の終わりを示す表現が欲しい・・・。

 その結果見つかったのが「果彼岸」「満彼岸」という言葉。なるほど。
 これは使える!
 ということで、現在は「彼岸明け」ではなくて「彼岸の果て」という表現に
 変えています。

 そんなわけで本日は、彼岸の果ての日。
 明日からは秋彼岸に向けて、また一歩一歩歩いていくことになりますね。

 ※「お彼岸の話」
   http://koyomi8.com/reki_doc/doc_0730.htm
  もよろしくね。

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