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■六曜の順番が変わるのはなぜ?
 本日は、暦関連の「よくある質問」の一つ、六曜に関係する話です。
 ちょっと前に

  9/25と26で六曜の順番が変わっています。
  なぜでしょう?
  (※2022の話です)

 というものがありました。
 六曜の順番は普通

  大安→赤口→先勝→友引→先負→仏滅→大安・・・

 のように循環してゆきます。
 では、質問頂いた9/25,26前後の六曜はどうなっているか見てみましょう。

  9/23,9/24,9/25,9/26,9/27,9/28,9/29
  大安,赤口,先勝,先負,仏滅,大安,赤口

 普通の順番で行けば、9/25が先勝なら9/26は友引となるはずのところが先負
 となっています。
 なぜでしょうね。

◇六曜とは
 六曜(ろくよう)とは、他に六輝(ろっき、「六輝星」とも)などとも呼ば
 れるもので、現在は大安、赤口、先勝、友引、先負、仏滅の六種類によって
 日の吉凶を表すものと考えられています。

 六曜の別名六輝ですが、六曜の「曜」は元々「かがやく」意味の文字ですの
 で、同じく「かがやく」と読む「輝」に置き換えたものです。
 こういう呼び名が登場したのは明治以後。比較的近年のことと言えます。

 これは現在の私たちにもなじみの深い日曜、月曜、火曜・・・という曜日の
 七曜との混同を防ぐため生まれた言葉のようです。六輝は明治以降に生まれ
 た言葉と書きましたが、実は六曜が広く使われるようになったのも明治以降
 で、最近のことなのです。

 六曜は元々は中国で行われていた時刻の吉凶判断を行う「六壬時課(りくじ
 んじか)」という占いの変形です。六壬時課は16世紀頃に日本に伝わってき
 たようですが、江戸時代にはほとんど無名に近い占いでした。

◇六曜は循環しているの?
 六曜は、

  大安→赤口→先勝→友引→先負→仏滅→大安・・・

 と循環しています。今日は「先勝」ですから明日は「友引」となります。
 ほとんどの場合、この「循環」が続いています。

 ここでわざわざ「ほとんどの場合循環する」と書いたとおり、この循環はあ
 くまで「ほとんど」で「ずっと」循環するわけではありません。
 ではどんなところでこの循環が途切れるのかというと、それは旧暦の暦月の
 変わり目です。
 先に掲げた日付と曜日の対応に、さらに旧暦の日付を追加すると

  9/24 赤口 (旧 8/29)
  9/25 先勝 (旧 8/30)
  9/26 先負 (旧 9/01)
  9/27 仏滅 (旧 9/02)

 9/25が「先勝」ですので、普通の巡りであれば翌日9/26は「友引」となるは
 ずですがここは「先負」と不連続になっています。
 しかし9/26の「先負」の次の9/27は普通の循環に戻って「仏滅」となってい
 ます。

◇六曜と旧暦の月日との関係
 六曜の循環が旧暦の月の変わり目で途切れる話しをしましたが、これはこの
 六曜が旧暦の月と日の数字で決まるためです。その規則は極めて簡単。

  (旧暦の月+旧暦の日)÷6 の余りが六曜

 というのがその規則。六曜それぞれの「余り」は

  0:大安 , 1:赤口 , 2:先勝 , 3:友引 , 4:先負 , 5:仏滅

 となります。
 今日(2022/9/30)は旧暦では 9/5です。この月と日で六曜を計算すれば

  (9 + 5) ÷ 6 = 2 余り 2

 必要なのは余りの数で 「2」。余り 2は「先勝」という訳です。旧暦の月が
 変わらない間は、日付が 1づつ増えて行くだけですから、この間は六曜は循
 環しますが、月が変わるところでこの関係が変化するため六曜も不連続にな
 るのです。

◇適度な規則性と、適度な神秘性?
 六曜の計算方法は前述したとおり極めて簡単。
 占いにはある程度の規則性が必要です(でないと、占うことが出来ませんか
 ら)が、あまり単純すぎると有り難みがありません。ちなみに、日~土曜日
 という七曜を使った占いもあって、この占いでは日曜日は目出度い日となっ
 ています。だからといって

  結婚式は目出度い日に行いたいので、9月の日曜日を教えてください。

 なんてことを、占い師さんに尋ねる人は、おそらくいないでしょう。だって
 曜日はずっと連続して循環してゆくものですから、占い師さんに尋ねるまで
 もなく、カレンダーをめくれば、日曜日は赤い文字で分かりやすく示されて
 いるのですから。

 こんな、誰の目にも明らかで単純な規則では「有難味」は感じられないです
 よね。やっぱり、どこか予測できないような神秘的な変化が、ある程度は必
 要です。

 六曜は一見循環しているようでいて、時々不意にその循環が途絶えるという
 点で、「ある程度の規則性と、ある程度の神秘性」があり、また手軽だとい
 うのも手伝って、瞬く間に広がったように思います。

 でもそのあまりにお手軽な計算方法を知ってしまうと「適度な神秘性」が崩
 れて有り難みも薄らぎますね。旧暦時代だと、毎年同じ月日は同じ六曜にな
 りますから、現在感じるような「ある程度の神秘性」がありませんでした。
 もしかしたら江戸時代に六曜がはやらなかったのは、こんな理由もあるのか
 もしれないななんて、思うカワウソです。

 以上、よく或る質問、「六曜の順番が変わるのはなぜ?」についての暦のこ
 ぼれ話でした。

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