日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■最後の七十二候、「鶏始めてとやにつく」について 暦日や季節は一年ごとに何度も何度も巡ってきます。ですから、暦日や季節 に関係する話もまた、何度も巡ってきます。 ただ、その中で人は変わってゆくため あれ、何年か前に質問されたよな? という具合に、暦関係の質問もまた、繰り返される率が高いです。 本日採り上げた「鶏始めてとやにつく」という言葉も、暦関係で繰り返しそ の意味を尋ねられるものです。 「鶏とやにつく」は七十二候(しちじゅうにこう)の最後となる大寒の末候 で、今年は1/30~2/3がその候の期間となります。七十二候はその名のとお りで72の季節を表す言葉なのですが、その中に意味のよくわからないものが あります(結構あります、かな?)。「鶏始めてとやにつく」もその一 つです。どんな意味なのでしょうか? この語が七十二候に取り入れられたのは、日本独自の暦である貞享暦からで す。それ以前に使われていた宣明暦(中国から輸入された暦法)までは 水沢腹堅 (すいたく あつくかたし) が大寒の末候にありました。実は「鶏とやにつく」のもととなった言葉は宣 明暦にもありましたが、これは別の候(大寒の初候)に使われていて、次の ような文字が使われていました。 宣明暦大寒初候 鶏始乳 (にわとり はじめてにゅうす) 意味は、 「鶏が春の気を感じて交尾し、卵を産み始める時期」 という意味です。貞享暦での文字はというと「鶏始乳(にわとりはじめてに ゅうす)」ですが、「にゅうす」では音から意味がとれないためか、のちに 此を「にわとりはじめてとやにつく」と読むようになりました。 ここで、「とやにつく」は「鳥屋につく」の意味でしょう。鳥が産卵のため に巣に籠もると云う意味です。漢字の意味から意訳的に読み下したと云うと ころです。 鶏始めて鳥屋につく とした方が解りやすかったですね。でも「鳥屋につく」という言葉が「産卵 のために巣に籠もる」とう意味だということも、今では判らなくなってしま っていますね。 今では一年中手に入る卵ですけれど、野生の鳥が年がら年中卵を産まないの と同じで、鶏も原種に近いものは春にしか卵を産まないのだとか。今とは違 うそんな鶏事情から、こんな言葉が七十二候に入っているのですね。 ちなみに俳句の世界でも「卵」は一般に春の季語とされているそうです。
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