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■星座占いは二十四節気占い?
 「あなたは何座生まれ?」

 こんなことを聞かれたことはないでしょうか?
 近頃は、少々減ったとはいいながら、毎朝のTV番組で、

  今日、一番ラッキーなのは おひつじ座生まれの人

 なんていう星座占いが行われることは多いし、雑誌などで採り上げられるこ
 ともおおい(全然やってないという方が少数派かと思われるくらい)。
 ということで、改めてたずねてみましょう。

  アタなた何座生まれ?

◇生まれた星座の区切りの日付
 さて、星座占いの星座の区切りの日付は、一般的には次のようになります。
(ウィキペディア「サイン(占星術)」より抜粋 https://onl.bz/9QjTEPN 
 日付については、トロピカル方式の数値を抜萃しています)。)

 -------------- ウィキペディア 引用 -----------------------
     3月21日 -  4月19日: 白羊宮(おひつじ座・牡羊座)
     4月20日 -  5月20日: 金牛宮(おうし座・牡牛座)
     5月21日 -  6月21日: 双児宮(ふたご座・双子座)
     6月22日 -  7月22日: 巨蟹宮(かに座・蟹座)
     7月23日 -  8月22日: 獅子宮(しし座・獅子座)
     8月23日 -  9月22日: 処女宮(おとめ座・乙女座)
     9月23日 - 10月23日: 天秤宮(てんびん座・天秤座)
    10月24日 - 11月21日: 天蝎宮(さそり座・蠍座)
    11月22日 - 12月22日: 人馬宮(いて座・射手座)
    12月23日 -  1月19日: 磨羯宮(やぎ座・山羊座)
     1月20日 -  2月18日: 宝瓶宮(みずがめ座・水瓶座)
     2月19日 -  3月20日: 双魚宮(うお座・魚座)
 -------------- ウィキペディア 引用 ここまで -------------

 ウィキペディアの原文に当たっていただけると説明があるのですが、日付に
 ついては1日程度の違いが生じる場合があります。とはいえ、一般的な説明
 としてはこんなところです。

 さて、この日付の区切りではあなたは何座生まれ?
 かわうそは・・・似つかわしくもなく可愛らしい星座です。

 かわうそが可愛らしい星座生まれになる件はさておき、この区切りはどんな
 風になされているのか? 基本的な考え方は、その時に太陽が何処(普通は
 黄道座標の経度、つまり黄経の値)にあるかで決められています。そうであ
 れば、この日付けのときに太陽が何処にあったか調べれば区切り方がわかる
 はずです。

 早速、確かめてみましょう。3/21といっても 0~24時までありますからとり
 あえずその真ん中、12時(正午)の値を計算してみます(日本時で)。
 すると結果は次のようになります。
 (Web こよみのページ 「太陽と月の黄経・黄緯の計算」
  http://koyomi8.com/sub/sunmoon_long.html の計算結果)

  2023/03/21 12h0m 視黄経= 0.232°
  2023/04/20 12h0m 視黄経= 29.788°
  2023/05/21 12h0m 視黄経= 59.834°
  2023/06/22 12h0m 視黄経= 90.478°
  2023/07/23 12h0m 視黄経=120.046°
  2023/08/23 12h0m 視黄経=149.758°
  2023/09/23 12h0m 視黄経=179.844°
  2023/10/24 12h0m 視黄経=210.442°
  2023/11/22 12h0m 視黄経=239.535°
  2023/12/23 12h0m 視黄経=270.998°
  2024/01/20 12h0m 視黄経=299.527°
  2024/02/19 12h0m 視黄経=329.948°

 小数点以下は無視すると、はっきりと規則性がわかりますね。
 黄経30°毎に区切られているのです。
 ということは、例えば、3/21~4/19のおひつじ座生まれの人が生まれた時に
 は、太陽はおひつじ座にあるんですね。なるほど・・・といいたいのですが
 おひつじ座生まれの区切りである、黄経0~30°に現在ある星座はというと、
 おひつじ座ではなくて、そのお隣のみずがめ座です。あれれ?

◇生まれ星座は変わる?
 おひつじ座生まれといわれる期間、3/21~4/19に太陽がある星座が水瓶座で
 ある理由は、ある日(ある季節といってもよい?)の太陽と星座の位置関係
 は、時とともに変化するからなのです。

 ただ、変化するといっても、その変化は比較的ゆっくり。 1°変化するのに
 およそ70年ほど、つまり普通の人の一生分くらいかかります。ですが、こん
 なゆっくりした変化でも長い時間をかけると、星座一つ分(30°ほど)も動
 いてしまうのです。これは、「歳差(さいさ)」と呼ばれる現象で、地球の
 自転軸の向きが空間(星座を形作る恒星の位置に対してといってもよいでし
 ょう)に対して変化する現象を主たる原因とするものです。

 この歳差の影響で、星座一つ分、30°もずれるためにはどれくらいの時間が
 かかるのかというと、ざっと2200年。現在の誕生星座占いの星座と実際の星
 座のずれを考えると、誕生星座占い形が固まったのは、歳差によって星座一
 つ分動くほど昔だったのだろうと推測出来ます。

 2000年以上も前に誕生星座占いなどを思いついた人達は、まさか太陽と星座
 の位置関係が変わるものだなんて、想像もしなかったんでしょうね(ただし
 歳差を発見したのは、紀元前 150年頃の天文学者、ヒッパルコスだとされて
 いますから、2000年前でも気がつく人はいたというわけです。ヒッパルコス
 すごい!)。

 さて、さすがに星座一つ分も違うと、目立ってしまいますから、星座占いで
 は、星座占いで使う星座(十二宮)と実際の星空の星座は異なると説明して
 いるようです。また、一方では、現在の星座(正しくは、区切りに使う黄経
 の30°毎の区切り、サイン)に合わせて、区切りの日付を変えて対処しよう
 とする考え方もあり前者を「トロピカル方式」後者を「サイデリアル方式」
 といいます。

 おわかりと思いますが、サイデリアル方式だと、何十年か毎に区切りの日付
 を変える必要があります。これからは生まれた日だけじゃなくて年も考えな
 いと誕生星座が求められないと言うことになるかも?(幸い、現在の主流は
 トロピカル方式のようですけれど)。

※どちらの方式でも、計算は黄経の30°毎の区切り(サイン)で考えるので、
 空に見える星座そのものとはいえません。当たり前の話ですが、星座の星は
 人間の都合に合わせて30°きっちりで区切れるはずはないからです。

◇星座占いの日付と二十四節気の関係
 さて、本日はなぜか「星座占い入門」みたいな話となってしまった、暦のこ
 ぼれ話ですが、最後くらいは暦の話につなげてみましょう。
 星座占いの星座の区切りが太陽の黄経で決まるということ、暦の上で重要な
 何かとよく似ていませんか?

 思い浮かびましたね、そう、二十四節気の区切りと同じ考え方です。
 現在使われている定気法の二十四節気は太陽の通り道である黄道を黄経15°
 毎に区切った期間で分けます。区切りの幅が30°と15°という違いはありま
 すがやっていることは同じ。二十四節気の 2つの節気を合わせて考えれば、
 まったく同じじゃないですか。では、並べてみましょう。

 春分  2023年 3月21日 ( 3月21日 おひつじ座)
 穀雨  2023年 4月20日 ( 4月20日 おうし座)
 小満  2023年 5月21日 ( 5月21日 ふたご座)
 夏至  2023年 6月21日 ( 6月22日 かに座)
 大暑  2023年 7月23日 ( 7月23日 しし座)
 処暑  2023年 8月23日 ( 8月23日 おとめ座)
 秋分  2023年 9月23日 ( 9月23日 てんびん座)
 霜降  2023年10月24日 (10月24日 さそり座)
 小雪  2023年11月22日 (11月22日 いて座)
 冬至  2023年12月22日 (12月23日 やぎ座)
 大寒  2024年 1月20日 ( 1月20日 みずがめ座)
 雨水  2024年 2月19日 ( 2月19日 うお座)
 
 例として求めた二十四節気は、2023~2024年のものです。()は、前述した
 トロピカル方式の一般的な誕生星座の始まりの日付です。どうです?
 日の区切り時刻の問題があって、 1日違って見えるところもありますが、こ
 れを見る限り、星座占いは、二十四節気占いといっても間違いじゃない?

 「二十四節気占い」なんてものはありありません(多分)が、この方式でい
 うとかわうそは、「処暑生まれ」ということになります。うん、なんかいい
 感じかな?

 今は「占いのもの」とだけとらえられている星座占いの十二星座(十二宮の
 元)ですけれど、その始まりは星座と太陽の位置関係から、季節を読み取る
 という「暦」としての顔をもったものだったのでした。

 多少無理矢理の感はありましたが、最後は一応「暦のこぼれ話」としてまと
 めてみました。強引だったかな?

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