日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)

■お釈迦様の誕生日と六曜
 今日(2023/05/27)は旧暦の日付では 4/8。
 4/8といえば、お存知ですよね?
 そう、お釈迦様が生まれたと伝えられる日です。これは目出度い。

◇今日は大安
 今日は目出度いお釈迦様の誕生日。
 目出度い日ですから、きっと佳いお日柄でしょう。
 「大安」だったりして?

 で、確かめて見ると案の定、大安です。
 ほら、やっぱり目出度い日ですね。
 なんちゃって。
 ちょっと、ズルしました(?)。

 ズルの種明かしは「今日は旧暦では 4/8」とわざわざ旧暦でお釈迦様の誕生
 日を書いたことです。もう勘のよい日刊☆こよみのページの読者の方はお解
 りですね?

 大安や仏滅といった六曜は旧暦の月日によって決まっています。
 例えば、旧暦の 4月についていえば、その始まりの 4/1は仏滅と決められて
 います。4/1が仏滅ですからあとは

  (4/1)仏滅→大安→赤口→先勝→友引→先負→仏滅→大安(4/8)

 という具合ですから、旧暦の4月8日は必ず大安になります。
 六曜はこのように旧暦の日付によって決められているものなので、お釈迦様
 の誕生日の日付 4/8を旧暦で表す限り、毎年この日は「大安」になります。
 ああ、やっぱり東洋の伝統行事には旧暦で考えるに限る・・・かな?

◇昔からじゃなかった「お釈迦様の誕生日の大安」
 現在はなぜか大変有り難がられるこの六曜(結婚式は大安だし、友引の葬式
 は忌み嫌われるし)ですが、実はそんなに大層な歴史やいわれがあるわけで
 はありません。

 六曜は中国から伝わった六壬時課(りくじんじか)と呼ばれる時刻の吉凶判
 断に使われる占いとして日本に伝わりました。日本に伝来した時期ははっき
 りしませんが、おそらく17世紀後半の頃だろうといわれますから、今からお
 よそ350年ほど昔です。

 「時刻の吉凶判断として使われた」と書いたとおり、本家の中国では六曜は
 あくまでも時刻の吉凶を占うもので、これを日付の吉凶判断に用いることは
 ありません。これがなぜか日本では日の吉凶判断にのみ使われるように変化
 してしまいました。

 本来時刻の占いであった六曜が日の吉凶判断に使われるように日本独自の変
 化を遂げましたが、六曜の変化はこればかりではありませんでした。六曜に
 登場する言葉(名称)も、そして順番も変わってしまっていたのです。
  300年程前に出版された和漢三才図絵に登場する六曜には

  大安・留連・速喜・赤口・小吉・空亡

 大安と赤口以外は馴染みのない言葉が並んでいます。
 更に順番も異なっていて、 4月の最初の日の六曜は赤口でした。和漢三才図
 絵が出版された時代の六曜でお釈迦様の誕生日 4/8が何になるかというと

  (4/1)赤口→小吉→空亡→大安→留連→速喜→赤口→小吉(4/8)

 お釈迦様の誕生日は大安ではなくて小吉でした。
 「お釈迦様の誕生日は大安、亡くなった日は仏滅。ほらやっぱり日の吉凶は
 あるんですよ」なんてことをおっしゃった方とかつて出会ったことがありま
 したが、どうやらこの説は後付けか、単なる偶然を御都合主義的に捉えたも
 のに過ぎないようです。

 お釈迦様もきっと「私の生まれた日は大安でした」なんてことはおっしゃら
 なかったはずです。お釈迦様がご存命の当時、六曜どころか六壬時課もまだ
 つくられちゃいませんでしたから、あたりまえですけどね。

 ちなみに、お釈迦様の誕生日が「大安」となるのと同じように、毎年決まっ
 た六曜となる行事が秋にあります。それは旧暦8月15日の夜の

  中秋の名月

 ただしこちらは、今回の話と違って毎回必ず「仏滅」になってしまいます。
 お月様もお月様の上で餅をついている月兎も仏滅なんて気にしないと思いま
 すけどね。

日刊☆こよみのページ スクラップブック