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■季節によって異なる満月の高さ
 今日は満月・・・を6日過ぎていますので、満月の話です。
 うむ、強引で脈絡がない。

 一応弁明しておくと、6日前の満月の日に月を眺めながら、この話を書こう
 と思ったので全く脈絡がないとも言えない、と思います(強引には違いない
 けどね)。
 一応弁明をしたところで本来の話題を始めます。

◇6/4の満月は高かった? 低かった?
 6日前の満月をみながら考えた本日の話題。今日は6/10なので、私が見あげ
 ていた満月は6/4(2023年の)ものです。

 6月の初めですから季節でいえば夏の月と言えるでしょうか。特に「暦の上
 の季節」で考えれば6月は夏至を含む月ですから、間違いなく夏の月という
 ことが出来るでしょう。
 さて、この私が見あげた夏の月の高さは、高かったのか低かったのか?

  高いも低いも、地上38万kmだから高いに決まってる!

 という話ではありません。あくまでも見かけの地平高度角の話。地平線に近
 いときを低い、天頂に近いときを高いと考えたときの高低の話です。
 さて皆さんはどう思います、私が見あげた6/4の夜の月は高いの?低いの?

 もし、この満月(か、その前後の日の月など)をご覧になった方は思い出し
 てください。どうでしたか?
 その夜の月を眺めたわたしの感想は

  わ、月が低いな~。あ、そうかもうすぐ夏至だものな

 というものでした。
 その時に月の高度を分度器(?)で測ったわけではないので、具体的な数字
 を示すために計算してみると6/4の夜の月の南中高度角はおよそ30度。
 日本で見る月の高度角としては大分低いということが出来ます。

 ※南中高度角
 天体(今回は月)が真南にきた瞬間の地平高度角。日本付近で考えれば、
 天体の地平高度角が1日の内でもっとも高くなる瞬間の地平高度角。

 あとは、この夜の月が「たまたま低かった」のか、それとも低かった理由が
 あったのか。答えは既に書いてしまいました。

  「もうすぐ夏至だものな」

 がその答え(ヒント?)です。

◇夏は低くて冬は高いお月様
 2023年には満月が13回ありますが、この13回の満月の日付と南中高度を調べ
 て見ると次の様になります(計算地は東京)。

  1/07 80度
  2/06 71度
  3/07 62度
  4/06 46度
  5/06 32度
  6/04 27度
  7/03 26度
  8/02 35度
  8/31 45度
  9/29 56度
 10/29 73度
 11/27 79度
 12/27 82度

 ご覧のとおり。6/4の満月は翌月の7/3の満月についで今年で2番目に低い月
 でした。一見してわかることは、冬の満月は高度が高く、夏の満月は低いと
 いうことです。この例は2023年のものですが、他の年でも結果はほぼ同様の
 ものとなります。

 天球における月の通り道は白道(はくどう)と呼ばれ、太陽の通り道である
 黄道(こうどう)とは少しずれています(白道と黄道とは約5.1度の角度で
 交差しています)が、大きなずれではないのでこれを無視して考えれば、月
 もほぼ黄道上を動いていると考えることが出来ます。

 満月は太陽と月が黄道上でちょうど180度離れた位置にあるときの状態です
 から、太陽が夏至の時期にある時の月は冬至の時期の太陽の位置にあるこ
 とになります。逆に冬至の頃の月の位置は夏至の頃の太陽の位置。

 太陽の高度は冬至の日が最も低く、夏至の日が最も高いというのはご存じの
 通り。ですから太陽と反対方向に見える満月の月の高度は夏至の頃である夏
 が低く、冬至の頃の冬が最も高いという季節変化を起こします。

 現在私が住んでいる場所は南側に太平洋が広がっています。夏の頃には低い
 位置に光る満月が、その下に広がる海面を照ら様子が見られます。その眺め
 は海辺に住む者の夏の楽しみの一つです。

 6/4の満月は終わってしまいましたが、夏至を少し過ぎた頃に昇る7/3の満月
 でも、またこんな景色を楽しめるといいのですが、あとはその日の天気次第
 ですね。

 ちなみに、お月見で知られる中秋の名月は秋の月。
 本日記載した満月のデータでは9/29の満月が中秋の名月にあたります。
 この時期は秋分のころですから、満月の位置は天球座標でいえば春分点と呼
 ばれる場所(太陽が春分の日に通過する黄道上の点)の辺り。この時の南中
 高度は50度半ば。高くもなく低くもなく、秋の月は月見には適したお月様な
 のですね。

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