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■明日の月はスーパームーン&ブルームーン?
 本日、2023/8/30は十五夜の月の日。そして明日8/31は満月の日。
 今回も十五夜の日と満月の日が一致しませんでしたね。
 と、本日はその話ではありません。

 「明日の満月がスーパームーンでありかつブルームーンである」といわれる
 件についての話です。

※十五夜の日と満月の日が一致しない件について興味のある方は
 意外と違う満月の日と十五夜の日(満月の月齢変化)
 http://koyomi8.com/reki_doc/doc_0534.html
 をお読みください。

◇明日の月はスーパームーン?
 まずはスーパームーンの話から。
 スーパームーンという言葉は最近ではニュースなどでもよく採り上げられる
 ようになりましたが、この言葉は比較的近年に生まれた言葉で、かつ天文学
 で使われる用語でもありません。

 元々は、普段よりも月と地球の距離が近い状態で起こる満月あるいは新月を
 指す言葉として、1979年にリチャード・ノールという占星術師が使い始めた
 言葉だとか。生まれてからまだ50年も経過していない言葉です。更にこれが
 日本などでも使われるようになったのは、おそらく2010年頃からだと思いま
 す。こちらだとほんの10年ちょっと前から使われ出した「新語」です。

 私がスーパームーンという言葉を初めて知ったのは2021年のこと。Web こよ
 みのページに利用者の方からこの言葉の意味を尋ねられたのが最初です。
 このとき、ちょっとおもしろそうな話だったので、質問に答えるついでに、
 Web こよみのページの「暦と天文の雑学」コーナーに、スーパームーンにつ
 いての解説記事を書いてみました。

 このスーパームーンですが、元々天文学的な概念ではなく、定義もはっきり
 しないものなのですが、大雑把に言えば月と地球との距離が近く、月が大き
 く見える時期の満月または新月と考えることが出来そうです。
 最も重要なのは「月が大きく見えること」。

 このためでしょうか、スーパームーンは満月または新月のはずですが、もっ
 ぱら騒がれるのは「満月」のとき。大きく見えることが大事だとすると、基
 本的に新月は見えないので騒がれることもないと言うことなのでしょう。
 日食でも起こさなければ、新月の見かけの大きさを確かめることはできませ
 んからね。

 私がスーパームーンという言葉を知った当時は、まだスーパームーンは数年
 に1度見られるかどうかと言う希少価値のようなものがあったように思うの
 ですが、その後なんだかスーパームーンののインフレが起きてしまって、最
 近では、1年に1度、あるいは2~3度くらい

  今夜の月はスーパームーンです

 というニュースを目にするようになってきました。
 ううむ、1年に2~3度ともなると希少価値は大分薄らぎますね(1年のうちに
 見られる満月は12,13度ほどですから)。

 元々、あまり正確な定義もなされず使われてきたスーパームーンですが、定
 義がないでは、計算のしようもありませんのでなにがしかの定義を行って計
 算することになります。
 現在よく使われる定義としては次のようなものがあります。


  1.月が近地点(公転軌道上で最も地球に接近する点)通過の前後数時間以
   内に満月(新月)となるもの(前後半日程度とすることが多い?)。

  2.月と地球の距離が一定の距離より近くなる場合(一定の距離については
   36万kmをとることが多い?)。

  3.1年の間に見える満月(新月)の内で最も月と地球の距離が近いもの。
   国立天文台ではスーパームーンという言葉は使わずに、「年間最大の満
   月」と言う言葉を用いています。

 1と2は制限時間あるいは、制限距離をどのようにとるかで、スーパームーン
 の出現頻度が数年に1度にも、1年に2~3度にもなってしまいます。その点3
 だと1年1度だけで、曖昧さもなくてスッキリしています。

 ちなみに、明日の満月の瞬間は、近地点通過の9時間半後で月と地球の距離
 は35万7千km程、そして2023年で一番大きな満月なので、1~3の全ての条件
 をクリアした満月ですので、今の時点では「スパームーン」と呼んでも良
 さそうです。
 参考まで、2023年の満月の中で大きい順に3つを拾い出すと

  1位 8/31の満月 (月・地球距離 357341km)
  2位 8/ 2の満月 (月・地球距離 357528km)
  3位 9/29の満月 (月・地球距離 361553km)

 となります。明日の満月と直前の満月、直後の満月が上位3位を占めていま
 す。

◇明日の月はブルームーン?
 スーパームーンの件はひとまず落着したので、次はブルームーンの話。
 ブルームーンといっても月が青く見えるわけではなくて「滅多にない月」と
 言う意味で用いられる言葉です。
 では、滅多にない月とはどんな月かというと

  1つの暦月の間に見られる2度目の満月

 を指すとされることが多いです。
 スーパームーンのところで、今年は8/2と8/31が満月であると書いていると
 おりですから、今年の8月には満月が2度あることが判ります。そしてあすの
 8/31の満月は8月の2度目の満月なので「ブルームーン」というわけです。

 ただ、この「1つの暦月の間に見られる2度目の満月」はブルームーンに関す
 る有名な(少なくとも一部の人の間では)誤りで、本来は1つの季節の間に
 4度の満月が見られる場合の3番目の満月をブルームーンと呼んでいたものが
 間違って伝えられてしまったものです。

 こちらについては、その昔、この日刊☆こよみのページでも採り上げており
 ますので、詳しい経緯はそのとき書いた下記の記事でお読みください。

  誤伝? ブルームーン
  http://koyomi8.com/doc/mlwa/201001310.html

 上記の記事の中でも書いていますが、間違ったブルームーンの解説から拡が
 ってしまった「1つの暦月の間に見られる2度目の満月」なのですが、判りや
 すい説明だったこともあって、今ではこちらの方が定着してしまっているよ
 うでもあります。

 今では「明日の満月はブルームーン」と言われても、それ間違いですとはい
 えないかもしれませんね。

◇スッキリしないけど「明日の満月はスーパームーン&ブルームーン」
 明日の満月は定義のはっきりしないスーパームーンと誤って伝えられたブル
 ームーンが重なります。
 なんかスッキリしませんが「明日の満月はスーパームーン&ブルームーン」
 と言うことになるのかな・・・。

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