日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■スーパームーンの周期性 皆さん、先日(2023/8/31)のいわゆるスーパームーン、御覧になりました? 本当に大きな満月でしたね(ほんまかいな?)。 このスーパームーンについては、8/30号の暦のこぼれ話でも採り上げ 「明日の月はスーパームーン&ブルームーン?」 というものを書きました。 本日はこの記事に対して頂いたご質問に答える暦のこぼれ話です。 (話題を提供してくださった K.K さん、感謝です!) 8/30の記事の中で2023年の満月を大きく見える順(月まで近い順)に3つ選 んで並べていました。その部分を次に再掲します。 1位 8/31の満月 (月・地球距離 357341km) 2位 8/ 2の満月 (月・地球距離 357528km) 3位 9/29の満月 (月・地球距離 361553km) この1~3位の日付 8/2,8/31,9/29 を見ると判りますが、この3つは連続した 満月です。これに気づいた、K.Kさんからからこんな質問を頂きました。 ----- K.K さんからの質問 ----- スーパームーンが話題となりましたが、スーパームーンが起こる周期のよ うなものはあるのでしょうか。 また、8/30の記事にあった2023年の大きな満月のトップ3が連続した満月 だったのは偶然ですか? それとも何か理由があるのでしょうか。 ----- 質問はここまで ----- K.K さんと同様の疑問を持たれた方もいらっしゃるかも(いないかな?)し れませんね。 これはいい話題だと、早速採り上げてみることにしました。 ◇スーパームーンの周期性 周期性があるかどうか、実際のスーパームーンを並べてみます。 8/30号で書いたとおり、スーパームーンといってもその定義にははっきりし ない部分があるのですが、判りやすい定義として、1年の満月の中で最も地 球に近い場所で満月となるものを選び出して並べてみます(2020-2029年)。 満月の日付 2020/04/08 ( 0) 2021/05/26 ( 14) 2022/07/14 ( 28) 2023/08/31 ( 42) 2024/10/17 ( 56) 2025/11/05 ( 69) 2026/12/24 ( 83) ※2027/01/22 ( 84) 2028/02/11 ( 97) 2029/03/30 (111) ()の中の数字は最初の行の満月(2020/04/08の満月)から数えた満月の回数 を表しています。「※」を付けた2027年をのぞいてこの満月の回数を眺めて みるとその間隔はほぼ14だと判ります。例外は2024年と2025年の間の13だけ です。 「※」を付けた2027年は2026年で一番大きな満月の次の満月なので、ある時 期の一番大きな月と二番目の月が年末年始を挟んで並んでいる状態だったの で暦年で区切ったら違う年になってしまったためにイレギュラーな並びにな ってしまいました。 こうして眺めてみると満月14回毎に「スーパームーンの季節が巡ってくる」 といっても良さそうです。 満月14回毎にということは、満月から満月までの間隔は平均29.53日ほどで すから 29.53日 × 14回 ≒ 413.4日 が凡その「スーパームーン出現周期」ということになりそうです。 ◇スーパームンの周期性の謎解き さて、実際のスーパームーンの間隔からスーパームーンの凡その出現間隔が 判ったところで、この周期性が出来る理由を考えてみましょう。 スーパームーンがどんな状態の月かを考えてみると、 1. 月が(新月または)満月である。 2. 月の見かけの大きさが大きい(月と地球が近い)。 1については、()ないに書いたとおり新月も含めて考えるのが本来らしい のですが、新月は見えないこともあってスーパームーンとして採り上げられ ることが少ないので、ひとまず無視して満月だけについて考えていますが、 新月を加えて考えても原理は同じです。 さて、上記の 1,2について考えるとき、関わりのあるのが次の2つの周期 です(いずれも平均の値)。 a. 29.53059日・・・朔望月(月の満ち欠けの周期) b. 27.55455日・・・近点月(近地点を基準とした月の公転周期) aの朔望月は月の満ち欠けの平均日数ですから、ある日の月が満月であれば その29.53059日後の月も月であると考えることが出来ます。 同様に、ある日の月が近地点(月の軌道上で地球に最も近い点)を通過した とするとそのbの近点月27.55455日後の月は再び、近地点を通過していると 考えることが出来ます(注意:ただし、朔望月も近点月も平均値なので、実 際には多少のずれは生じてしまいます)。 さて、a,b の周期が関係していると判ったところで、先に計算した実際のス ーパームーンの日付から求めた「413.4日」という周期と a,b の関係を考え てみると aについて ・・・ 413.4 ÷ 29.53059 = 13.99904 ≒ 14 bについて ・・・ 413.4 ÷ 27.55455 = 15.00297 ≒ 15 という関係が見えてきます。 朔望月の14倍と近点月の15倍の日数の差を求めてみると 29.53059 × 14 - 27.55455 × 15 = 0.11001(日) と、差はわずか0.1日程度ですので、ほぼ一致していると言うことが出来る でしょう。 このことから、一度スーパームーンと呼ばれる満月があれば、その14朔望月 後(≒15近点月後)には再びスーパームーンとなる条件がそろった月が出現 するということになります。そしてその周期はおよそ413日。1年と50日弱く らいということになります。 ◇2023年の大きな満月トップ3が連続しているのは偶然か? 最後に K.Kさんから頂いたもう一つの質問についてですが、これは偶然では ありません。本日記事の始めに示した 2020-2029年の「一年で一番大きな満 月のデータ」から、2023年のスーパームーンとなった2023/8/31のデータを 抜き出してもう一度示すと 2023/08/31 ( 42) となります。()の中は2020年で一番大きく見える満月(いわゆるスーパー ムーン)から数えた満月の回数でした。この数字と、朔望月を使って基準と した2020年のスーパームーンからの日数を計算してみると 29.53059 × 42 = 1240.285日 (※実際の満月の瞬間の日時から計算下結果は 1239.96日) 42回の朔望月はほぼ45回の近点月となり、その差を求めると 29.53059 × 42 - 27.55455 × 45 ≒ 0.3日 と、ずれはたったの0.3日程なので、ほぼぴったりといえるでしょう。 その前後の満月についても同様の計算をすると 29.53059 × 41 - 27.55455 × 44 ≒ -1.6日 29.53059 × 43 - 27.55455 × 46 ≒ 2.3日 その差は -1.6日、2.3日と少々大きくなっていますが、近点月の27.55455日 から考えると、2.3日のずれでも8%程度、-1.6日なら6%程度の日数の差でし かありません。このため、今年最も地球に近かった8/31の満月の前後の満月 も、8/31程ではないけれど、それに近い状態(地球に近い)で満月の瞬間を 迎えます。ですから、スーパームーンとはいえないかもしれませんが 準スーパームーン と呼べるくらいは大きい状態となります。 ですから、2023年の大きな満月トップ3が連続した満月だったのは偶然では なく、理由があったことがわかります。そして、先のスーパームーンの周期 と合わせて考えると、およそ413日毎にこんな、スーパームーンと準スーパ ームーンが連続して現れる「大きな月の見える時期」が出現することがわか ります。 ということで、次の2023/9/29の満月も準スーパームーンと呼べるくらいの 大きな月を楽しむことが出来ます。そしてこの月、中秋の名月でもあります から大きなお月様で楽しいお月見が出来そうです。 このお月見が終わったら、次のスーパームーンの季節は2024/10前後となり ます。 以上、K.K さんからのご質問から始まった「スーパームーンの周期性」の話 でした。
日刊☆こよみのページ スクラップブック