日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■コンピューターと復活祭の日付 明日は3/31は今年(2024年)のキリスト教の西方教会系統(カトリックやプ ロテスタントなど)の復活祭(イースター)の日ですので、それにちなんで 復活祭にまつわる話を一つ採り上げることにします。 「復活祭の日付にまつわる話を一つ」と云いましたが、日付そのものについ ての話ではなくて、目先を変えて復活祭に関係する言葉についてのこぼれ話 です。 ※復活祭はキリスト教でも東方正教会系の復活祭は西方教会系のそれとは日付 けが異なります(たまに一致することもあります)。東方正教会系の復活祭 は今年は5/5。但しこれは現在広く使われているグレゴリオ暦での日付けで 東方正教会系の教会が計算に用いるユリウス暦(グレゴリオ暦の前に使われ ていた暦)では 4/22にあたります。 ちょっと余談でした。 ◇面倒くさい計算はコンピューターで 面倒くさい計算をする場合の強い味方といえば、コンピューター(電子計算 機)です。 「いやいや計算に使う道具といえば、そろばんだ」とおっしゃる方、「電卓 だに決まっている」と言い張る方もございましょうが、ここは私の話に付き 合って「コンピューターだ」と思って下さい。 (※電卓は、電子卓上計算機の略ですから、電子計算機の仲間でOKか?) このコンピューターの英語の綴りは「computer」。 この言葉は、計算するという意味の「compute」 から出た言葉です。 面倒くさい計算をしてくれる機械がコンピューターというわけですね。 英語のcompute はラテン語の「Computus(コンプトゥス)」がその語源だと 云われます。この言葉の意味は「計算する」「総計する」ですが他に「暦の 計算をする」という意味もあります。 ◇暦の計算は面倒くさい! 面倒くさい計算にはいろいろあるでしょうけれど、日刊☆こよみのページや Web こよみのページなどで取り扱う各種の暦計算もそうした面倒くさい計算 の一つ。 日刊☆こよみのページに毎日掲載している日月出没時刻や、今日の暦データ などもコンピューターが無ければ、計算するのは大変で、このメールマガジ ンの名前は「月刊☆こよみのページ」になっていたことでしょう。このメー ルマガジンが「日刊」であるのもコンピューターの存在のおかげです。 こよみのページを作る私に限らず、暦計算に関わった古今の大勢の人々につ いても、事情は同じです。沢山計算しなくちゃいけなかった。 とっても大変だったわけです。 そんな面倒な暦計算の中でも昔からみんなの頭を悩ませたものの一つが復活 祭の日付の計算でした。 ◇毎年変わる復活祭の日付とComputus 昨日の暦のこぼれ話でも触れているように、キリスト教の復活祭の日付は毎 年日付が変化する移動祝日です。 どんな風に日付が変化するかというと 春分の日以後の満月の日を過ぎた最初の日曜日 というのがその変化の決まり。見ただけで「・・・」と言葉を失ってしまい そう。来年の復活祭の日付はいつかななんて疑問が浮かんでもそう易々とは 答えられそうもありません。 ちょっと待ってください。いまから面倒くさい計算しますから ということになります。 経済活動も今よりずっと少なく、ノンビリしていた中世時代では複雑な計算 自体が少なかったと思います。そんな中にあって面倒でも必ずしなければな らない重要な計算はといえば復活祭の日付を求めるための計算でした。 このため、本来は「計算すること」を表す言葉であったComputus(コンプト ゥス)は、いつしか「復活祭の算出法」を表す言葉となってしまいました。 ※正式には computus paschalis(コンプトゥス パスカーリス)で復活再計算 となります。 こよみのページにも復活祭の日付を計算するページがあります。 (キリスト教の移動祝日計算 http://koyomi8.com/sub/easter.html) このページでの暦日計算ももちろんコンピューターを使って行っています。 コンピューターと復活祭、まるで無関係に見えるこの二つのことがらですが その元をたどると「Computus」という一つの言葉に行き着きます。 世の中、いろいろなものがいろいろなところで結びついているものですね。 ◇最後は、絶滅危惧種のつぶやき コンピューター。今では日本の全人口の半分くらいは生まれたときからこれ が身の回りにあり、コンピューターが無かった時代があったなんて想像が出 来ないという世代で占められるようになってきました。 物心ついた時に、まだ身の回りにはコンピューターも電卓もなかったという 私のような世代は、そろそろ絶滅危惧種です。
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