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■蛍の初見と「腐草蛍となる」季節
 立春の「東風凍を解く」から始まる七十二候の26番目、「腐草蛍となる」の
 期間は今年、2024年は6/10~15です。暗闇の中に蛍が飛び始める季節です。

 先週の金曜日(6/7)の夜でした。外で立ち話をしていると、夜空の星々の間を
 滑るように動く光点が見えました。

   流れ星!

 と思いましたが、目にした光点の奇跡がわずかに蛇行していた気がしたので
 光が消えた辺りをそのまま見ていると、少し離れたところに再び動く光点が
 見えました。蛍でした。「腐草蛍となる」の時期に合わせたような、私の蛍
 の初見でした。

 「腐草蛍となる」は蛍は腐った草が変じて生まれるかのような言葉です。今
 ならそんなことはないことは誰でも知っていますが、夕方に積み重なった腐
 草のある辺りから、昨日まで見なかった蛍が飛び交わす姿を見れば、大昔の
 人達が「蛍は腐草が変じたもの」と素朴に思ったとしても、無理からぬこと
 だと思います。

◇蛍の初見前線
 桜の開花日情報などで知られるように、全国の気象台ではその地域に生育す
 る幾つかの動植物の開花や紅葉、初見や初鳴きなどの「生物季節」を観測し
 記録していています。蛍の初見もこうして観測される生物季節の一つの指標
 です。

 生物季節の指標は、桜のようにほぼ全国共通の生き物を使う場合もあれば、
 そうでないも場合もあります。生き物のことですから、その生育する場所が
 異なるため、何もかも全国一律というわけにも行かないわけです。

 では蛍の初見はどうかというと、これはほぼ全国で共通に観測される項目と
 なっていました。全国で蛍の初見日が観測されているとすれば、これを集め
 れば桜の開花前線のような「蛍前線」を地図の上に描くことが出来ます。
 現にいくつかのサイトに蛍前線に類する情報が見つかります。その一つが本
 家の気象庁にあります。

  https://www.data.jma.go.jp/sakura/data/hotaru2010.pdf

 こちらのデータは1981~2010年の間の蛍の初見日の平年値です。
 データがやや古いですが、とても見やす資料でしたので紹介します。

 さて、このサイトの図を見ると見ると蛍の初見日の前線は3月下旬に沖縄地
 方の南部から始まり、5/20頃に九州地方に上陸、その後順調に北上し、現
 在私の住んでいる紀伊半島南端部付近を5/31に通過、東京あたりに到達する
 のは6/20頃。そして7/20頃に終着地点の東北北部に到着するという具合だと
 判ります。

 この図を見ると、七十二候の「腐草蛍となる」の時期には蛍前線は本州の真
 ん中辺りを通過中。暦の上の蛍の登場時期を示す日付けとしては、結構いい
 感じですね。

 本日は私の蛍の初見体験から、七十二候の「腐草蛍となる」の話を書いてみ
 ました。そろそろ皆さんの住む場所でも、腐草が蛍に変じて飛び交い始めて
 いるかもしれません。
 皆さんの「蛍の初見レポート」があれば、送ってください。
 楽しみにしております。

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