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■「スポーツの日」に移動祝日の話
 今日は祝日「スポーツの日」です。
 皆さんはいかがお過ごしでしょうか?

 昔は体育の日とかに学校や地域の「運動会」が央枯れていた気がします。50
 年ほど昔、東北の片田舎で成長していた私の記憶によればなので、地域が違
 えばそんなことはなかったかもしれませんが。

 とはいえ、現代ではこの祝日に併せて学校の運動会など行うところは全国的
 にもほとんど無いとおもいますがどうでしょう? 「働き方改革」とやらで
 教職員を祝日に働かせるなんてとんでもない・・・、なんてね。

  「いやいややってますよ、運動会」

 という情報をお持ちの方は教えてください。

◇「スポーツの日」と移動祝日
 通称ハッピーマンデー法と呼ばれる祝日法改正によって、祝日の日付が

  ○月第×月曜日

 と固定された日付けから日付の移動する移動祝日に変わった祝日が現時点ま
 でに4つあります。「スポーツの日」はその4つの祝日の一つです。その4つ
 とは

・第一グループ(2000年から変更となったもの)
  成人の日 ・・・ 1/15から1月の第2月曜日に
  スポーツの日 ・ 10/10から10月の第2月曜日に(旧「体育の日」)

・第二グループ(2003年から変更となったもの)
  海の日 ・・・・ 7/20から7月の第3月曜日に
  敬老の日 ・・・ 9/15から9月の第3月曜日に

 私は面倒なので、第一、第二グループともその変更理由となった法律は「ハ
 ッピーマンデー法」とひっくるめて呼んでいるのですが、正しくは

  「国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律」
  「国民の祝日に関する法律及び老人福祉法の一部を改正する法律」

 という二つの法律で別々に改正されたものです。ま、こんな長い名前をわざ
 わざ覚えたところでいいことなんてないので「ハッピーマンデー法」と呼ぶ
 ことをお許しください。

 週休二日の普及によって土日が連続した休みとなるという人が増えてきたと
 ころに、このハッピーマンデー法でいくつかの祝日を月曜に移動することで
 三連休という長めの休みを作り、国民の余暇活動を促進させることで経済活
 動を活性化しようという目論見の割を食った4祝日です。

 私などは、体育の日といえばやはり 10/10という固定した日付が頭に浮かぶ
 のですが、現在のように移動するようになったのが2000年からですから、今
 年でもう25年目。10/10が体育の日・・・と頭に浮かぶ人間も大分数を減ら
 してきているでしょう。

 それはさておき、三連休を増やすということであれば、祝日みんな移動祝日
 にしてしまえばいいはずですが、そうした動きはありません。どうやら祝日
 には移動させてもよい祝日と、移動させてはいけない祝日があるようです。
 その線引きはどの辺にあるのでしょう?

◇ハッピーマンデー法で移動する祝日は?
 まず始めに、ハッピーマンデー法で移動するようになった祝日にはどんなも
 のがあるかを見てみましょう。

  ・成人の日 ・・・ 1月第2月曜日(1999年までは 1/15)
  ・海の日  ・・・ 7月第3月曜日(2002年までは 7/20)
  ・敬老の日 ・・・ 9月第3月曜日(2002年までは 9/15)
  ・スポーツの日・・ 10月第2月曜日(1999年までは10/10)
   ※「スポーツの日」の名称は2019年までは「体育の日」でした。

 ちなみに日付が移動する祝日としては、他に「春分の日」「秋分の日」の二
 つがありますが、こちらは連休を増やすといった意味はなくずっと前から天
 文学的な春分日、秋分日をこの祝日とすることになっていましたから、ここ
 では、考えないことにします。

 ハッピーマンデー法の対象となった祝日とそうでない祝日の選別は何処にあ
 るのか? 残念ながら祝日法(正しくは「国民の祝日に関する法律」)には
 選別の線引きは書かれていませんので後は勝手に推測しかないですね。

◇祝日の日付の意味
 ハッピーマンデー法の対象となった 4祝日をみてまず思うことは元々の祝日
 の日付の意味です。それぞれの祝日にはそれなりの意味があることにはなっ
 てはいますが、ではその意味はと云われてきちんと思い浮かぶものは体育の
 日の 10/10(東京オリンピック開会式の行われた日)くらいではないでしょ
 うか。体育の日の日付の理由だって祝日としての意味との関連で考えればま
 あそんなに東京オリンピックに義理立てしなくてもよさそうにも思えます。

 なるほど、その日付にたいした意味が無いのなら動かしてもいいかと動かさ
 れてしまったのでしょうか。

 確かに元日を 1/1以外にするわけにはいかないでしょうし、古くからある端
 午の節供と結びついていると考えられるこどもの日を 5/5から移動させるの
 も難しいようには思いますが、では勤労感謝の日は 11/23から遷しちゃいけ
 ない理由は? やはり、新嘗祭と切り離せないのかな?

◇明治憲法下の「休日ニ関スル件」との関係
 新嘗祭とは現在の勤労感謝の日に行われる宮中祭祀ですが、そういえば現在
 の「国民の祝日に関する法律」に相当する明治憲法下の「休日ニ関スル件」
 という法律では「新嘗祭」自体が祭日となっていました。こう考えたときふ
 と、もしやこの古い「休日ニ関スル件」にあった祝祭日の日付はハッピーマ
 ンデー法の対象から外されているのではと思い浮かびました。

 そこで、試しに現在の祝日のリストに、「休日ニ関スル件」に有るものには
 「古」をそうでないものには「新」をつけ、さらにハッピーマンデー法の対
 象となっている 4祝日には「△」をつけてみました。
 その結果は以下のとおり。

   古  1/ 1 元日 (四方拝)
  △新  1/ 8 成人の日
   古  2/11 建国記念の日 (紀元節)
   古  2/23 天皇誕生日 (天長節(令和) ※注意)
   古  3/20 春分の日 (春季皇霊祭)
   古  4/29 昭和の日 (天長節(昭和))
   新  5/ 3 憲法記念日
   新  5/ 4 みどりの日
   新  5/ 5 こどもの日
  △新  7/15 海の日
   新  8/11 山の日
  △新  9/16 敬老の日
   古  9/22 秋分の日 (秋季皇霊祭)
  △新 10/14 スポーツの日
   古 11/ 3 文化の日 (明治節)
   古 11/23 勤労感謝の日 (新嘗祭)
  (日付は2024年の祝日の日付とした)

 祝日の末尾に「(四方拝)」のように()書きされたものは、「休日ニ関ス
 ル件」でその日付に該当した祝祭日の名称です。

  2/23の今上天皇の天皇誕生日は当然明治憲法下の「休日ニ関スル件」には
 登場しないものですが天皇誕生日は「休日ニ関スル件」の下では「天長節」
 とされたものですから、もしこれが続いていれば間違いなく天長節となった
 はずなので「古」としました。

 こうしてみると「古」のついたものは一つもハッピーマンデー法の対象とは
 なっていません。対象となっているのは全部「新」の祝日です。

◇ハッピーマンデー法の対象にならない「新」の祝日
 「古」の祝日がハッピーマンデー法の対象となっていないという法則(?)
 は有るようですが、では「新」の中でハッピーマンデー法の対象となるかな
 らないか、その明暗を分けるものは何でしょうか。
 「新」なのに現段階でハッピーマンデー法の対象となっていないものを見て
 みると、

  憲法記念日(5/3), みどりの日(5/4),こどもの日(5/5),山の日(8/11)

 の4つの祝日ということが分かります。
 これを見て思うことは、全部大型連休を形成する祝日だということです。

  ちょっとまって?
  最初の3つは5月のゴールデンウィークだからわかるが8/11の山の日は?

 これについても推測となりますが、8/11という日付けは法的な連休ではない
 けれども慣習的に連休化している8月の行事、「お盆」との関連を考えると
 わかります。お盆の時期は一般に8/13~15ですので、これとひっつけて大型
 連休化しようとしたのではないでしょうか。お盆の休みを長くすれば、帰省
 を兼ねた家族旅行などがしやすくなる、そんな目論見だったのでしょう。

 ハッピーマンデー法の元々のねらいは「連休を作る」ことだったわけですか
 ら毎年、祝日がらみの長い連休となるゴールデンウィークを既に形成してい
 る祝日をわざわざ移動させる意味が無いことになります。

◇ハッピーマンデー法の対象となる祝日の条件
 ここまで考えると、ハッピーマンデー法の対象となる祝日の条件は

  1.戦後の「国民の祝日に関する法律」ではじめて祝日となった祝日。
  2.本来の日付のままでは大型の連休を形成しない単発の祝日。

 の 2つを同時に満たすものではないでしょうか。
 ハッピーマンデー法の何処にもそんな条件は見いだせませんが現段階で対象
 となった祝日、ならなかった祝日を見て行くとこんな条件が見えてきます。

◇「山の日」の日付けについての補足の解説
 現在の「山の日」の日付けは8/11。
 お盆と合わせた大型連休化を狙うなら8/11ではなく8/12とすべきでは? と
 考えられます。そのとおり。実はこの「山の日」を祝日に加えるための法案
 が提出された当初、山の日の日付けは「8/12」とされていたのでした。

 ところが、法案の審議が進む間に日付けが「8/11」に変更されて、現在の日
 付けとなっています。なぜ変更になったのか? これも推測ですが8/12は祝
 日として祝うには好ましからぬ出来事の記憶があったのです。
 それは1985/8/12に起こった「日航ジャンボ機墜落事故」。8/12は単独機が
 起こした世界最悪の航空機事故の日です。日航ジャンボ機が山に墜落した日
 に「山の日」という祝日を置くわけにはいかなかったのでしょう。

◇最後にぼやき
 どうでもいいのですが、連休を作るなんて云うことのために祝日をいじり回
 すのはやめて欲しいなと思うかわうそです。祝日法の第一条にある「意義」
 には、

 『自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、
  よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、
  ここに国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを
  「国民の祝日」と名づける。』

 とあります。
 祝日は単に「休日を増やすため」にあるわけじゃないのですよね。
 と「スポーツの日」という祝日にのんびり休みながらぼやいているかわうそ
 でした。

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