日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)
■四月八日に「甘茶」の話 「甘酒は、私が年中愛飲してる飲み物です。そもそも甘酒とは・・・」 と思わず甘酒の話を始めそうになりましたが、違いました。 本日は、四月八日。 四月八日といえば、灌仏会。 灌仏会といえば、甘茶だよな。 ということで、本日の話は甘酒ならぬ四月八日の甘茶の話です。 ◇灌仏会とその行事 今日、四月八日は灌仏会(かんぶつえ)です。 灌仏会はお釈迦様の誕生日といわれている日。 お釈迦様と同じく世界的大宗教の祖であるイエスの誕生日とされるクリスマ スが大々的に祝われているのに対して、こちらはかなり地味な誕生日です。 灌仏会の日付は、新暦で祝われる地域(主に関東)や月遅れで祝われる地域 (主に関西)などがあるようです。本日か関東風(?)に、新暦の四月八日 にこの記事を書いております。月遅れでお祝いするという地域の方は、来月 の今日、思い出して、日刊☆こよみのページのバックナンバーをめくって、 この記事をお読みいただければありがたいです。 さて、灌仏会の行事といえば 花々で飾られて花御堂(はなみどう)を作り、その中に置かれた灌仏盤 (かんぶつばん)または、浴仏盆(よくぶつぼん)と呼ばれるものの中 に誕生仏を安置し、参拝者が竹の柄杓でこの誕生仏に甘茶を注ぐ。 といった具合のものです。それぞれのお寺により違いが有るでしょうが、だ いたいはこんなところでしょう。 花御堂は釈迦が誕生地、ルンビニの花園を表しているのですが、沢山の花で 御堂を飾る事から、灌仏会は花祭りとも呼ばれます。 甘茶を誕生仏にかけるのは、釈迦の誕生を祝って九頭の龍が天から甘露を注 いで産湯を使わせたという故事にちなむと言います(経典によっては、龍の 代わりに梵天や帝釈天だったりします)。 「灌」の文字は水を注ぐという意味がありますから、灌仏会という名前はこ の故事から生まれたものです。 元々は五色水という五種類の香料から作られた香水が注がれたものですが、 江戸時代あたりから現在の形になったようです。 ◇甘茶の霊験? 灌仏会で誕生仏に注がれた甘茶ですが、これはアジサイ科、アジサイ属に属 するその名も「アマチャ」という植物の葉を乾燥、発酵させたものを煎れた お茶のことです。 アマチャはヤマアジサイの変種だそうで、花の見かけはアジサイの原種とい われるガクアジサイの花とそっくり(私には見分けがつかないと思います) です。今と違って砂糖が高価で、甘味の少ない時代にはアマチャから作り出 される甘さは貴重なものだったようです。 ちなみにですが、このアマチャとは全く違った植物に、蔓性の「アマチャズ ル」(ウリ科)の葉や蔓をに出して作るアマチャズル茶も「甘茶」と呼ばれ ることがあるようです。 昔は貴重な甘味飲料であった甘茶ですが、特に灌仏会で誕生仏の像に注がれ た甘茶には霊験があり、家族で飲むと丈夫になるとか、目に付けると目がよ くなるなどといわれましたので、灌仏会の参拝者はこの甘茶を水筒に詰めて 帰ったそうです。 またこの甘茶で墨をすり、 千はやぶる卯月八日は吉日よ 神さけ虫を成敗ぞする と書いて、この紙を戸口や柱に逆さまに貼っておくと、虫除けの呪いになる といわれます。 いろいろと霊験あらたかな、甘茶のようです。 昔と違って甘味の溢れる現代ですが、たまには甘茶でも飲んで、昔の人たち が楽しんだ昔の甘さを味わってみるのもいいかもしれません。そして、甘茶 を飲んで昔を懐かしんだら、ついでにお釈迦様の誕生日もお祝いしてあげま しょうね(最後は罰当たりな発言でした)。
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