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■「衣更え」の日 カレンダーが 6月に変わりました。 6月1日といえば、衣更え(衣替えとも)の日。 制服のある仕事にお就きの方や学生などはこの日から夏服に替わるというと ころも多いはずです。今日は日曜日なので、実施は明日の月曜日になると思 いますけれど。 ◇更衣(こうい) 平安時代、宮中では四月と十月(何れも旧暦)の一日に衣更えが行われてい ました。この衣更えのことを「更衣」といいました。 当時の衣更えは衣類の種類を変えるだけでなく、調度品なども冬用から夏用 へと変えたとのことですから、かなり大がかりな作業を伴う行事だったと思 われます。 ご存じのとおり旧暦は 一月~三月:春 四月~ 六月:夏 七月~九月:秋 十月~十二月:冬 という区分けがありましたから、四月と十月という時期はそれぞれ夏の初め、 冬の初めということになります。この季節の変わり目の日に、けじめを付け て、衣類・調度を変えるのが衣更えでした。 本来の「更衣」という呼び名ですが、これはその後天皇に仕える女官の役職 名にも「更衣」(「女御(にょうご)」に次ぐ役職)があったことから、民 間ではこの呼び名を避けて、衣更えと呼ばれるようになりました。 ちなみに今年の旧暦四月と十月の一日は新暦では 旧暦 4/ 1 → 新暦 4/28 旧暦10/ 1 → 新暦11/20 となります。 ◇江戸時代の衣更えは年四回 この行事は、江戸時代になると幕府でも正式な行事として行っておりました が、木綿の普及などにより衣類も多様化しましたから、衣更えの時期も細分 化されて年四回に増えました。 確かに「夏と冬」の年二回の衣更えで全てをまかなおうとしたら、暑すぎた り寒すぎたりということも多々あったと思われます。 江戸時代の衣更えの日付は次の通り 旧暦 4/ 1 → 新暦 4/28 旧暦 5/ 5 → 新暦 5/31 旧暦 9/ 1 → 新暦10/21 旧暦 9/ 9 → 新暦10/29 ちなみに、後ろに書いた新暦の日付は2025年の旧暦の日付を新暦の日付に換 えたものです。 衣更えの日付の中に 5/5, 9/9とありますが、それぞれ「端午の節供」と 「重陽の節供」の日付。そうした節目に合わせて衣更えを行っていたのが判 ります。 また衣更えは単に服装を替えるだけの日ではなく、その前後で衣類の手入れ を行う行事でも有りました。現代のように衣類を新調する等ということが手 軽に行えなかった時代ですから、こうした日を設けて、丁寧に使い続けたも ののようです。 ◇洋装の普及と衣更えの日付 江戸時代には年四回あった衣更えですが、明治時代に入って洋装が普及して からは、これが整理されて現在の 6月と10月の年二回となりました。 これは、洋装の方が温度調節などが容易に行えることから、服装全部を変え るようなことをしなくても、少々の暑さ寒さなら調整可能だったためのよう です。 現在は、「みんな一斉に」なんていうことは徐々に少なくなり、個々人で必 要なときに服装を替えるのが普通となりましたから、衣更えの慣習は主に、 制服を持った職場や学校だけに見られる現象になったようです。 もっとも、近年になって空調システムの普及や、服装の簡素化などの影響に よるものなのか、制服のある職場や学校などでも、衣更えの時期が変わりつ つあるようです。 そのうちに、旧暦時代の衣更えの時期がちょっと覚えた違和感を新暦の6月 と10月の衣更えの日にも感じるようになるかもしれません。
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