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■太陽が緑色? (グリーンフラッシュの話)
 今年も間もなく夏至。
 この時期は、一年で一番太陽が元気なはずの季節ですが、現実は梅雨の雨雲
 に隠れて、元気な太陽の姿を拝する機会があまりありません。なかなか太陽
 の姿を目にすることのできない時期ですが、本日はあえて(?)、その太陽
 の話を書いてみます。

◇朝日、夕日の色
 「真っ赤な夕日」なんていう言葉がありますが、こんな言葉が普通に使われ
 るように、朝日や夕日が何色でしょうかとたずねれば、多くの人は

  赤、橙色

 などと答えると思います。
 こんな時に

  ええと、夕日は緑色に見えます

 なんて言ったら目がおかしい(頭おかしい?)のではと言われそうです。
 ですが、条件が良ければこのおかしな「緑色」の朝日、夕日が見えること
 があるのです。

◇グリーンフラッシュ(緑閃光)
 大気が澄んでいて、水平線や地平線までくっきりと見えるような時に夕日を
 観察すると、太陽の姿が地平線に隠れる寸前、その上辺部分が短い期間です
 が緑色に見える場合があります。この現象は「グリーンフラッシュ」とか、
 「緑閃光(りょくせんこう)」と呼ばれます。

 朝日や夕日を見れば、すぐにグリーンフラッシュが見られるかというと、そ
 う簡単にはいきません。既に書いたとおり、水平線や地平線までくっきりと
 見えるような、場所で、空気が澄んだときでないと見ることが出来ません。

 また、太陽(の一部)が緑色に見えるといっても、緑色に見える時間は1~2
 秒と短いので、よくよく注意していないと気がつきません。
 チャンスをねらって、しっかり観察しないと気が付かない現象です。

◇なぜ緑色?
 朝日や夕日が赤く見えることについては、太陽の光が真昼のときのように地
 球の大気を真上から通過するのではなく、横から通過するようになるために
 それだけ大気の中を長く通過することになります。そのため、大気による減
 光の影響が強くなり、大気減光の影響を強く受ける波長の短い紫や青の光の
 成分が失われます。

 このため、私たちが目にする朝日、夕日の太陽の光は、大気による減光の影
 響をあまり受けない、波長の長い黄色や赤色の光ばかりということになりま
 す。

 さて、ここで「紫や青といった波長の短い光は到達しない」と書きましたが
 では、「緑色」はというと、これは何とか厚い大気を通り抜けて私たちまで
 到達します。もっとも、その量は赤色などに比べて少ないので、空気が澄ん
 だときでないと、この緑の光を見ることは難しいです。

 ここで、小学校(中学校だったか?)で行ったプリズムの実験を思い出して
 ください。プリズムに太陽光を透すと、紫・青・緑・黄・赤といった具合に
 色が分解されて見えます。

 これは光がその波長毎にプリズム(一般にはガラス素材)内で屈折する度合
 いが異なるために起こる現象で、波長が短い紫や青ほど屈折する度合いは大
 きく、波長の長い黄や赤は屈折の度合いが小さいためです。

 地球の大気もこのプリズムのような「屈折現象」を起こします。
 すると、朝日なら屈折の度合いの大きな波長の短い光のほうが波長の長い光
 より私たちに早く到達することになります。夕日の場合なら、波長が短い光
 ほど、遅くまで私たちに達することになります。
 つまり、朝日の最初の光、夕日の最後の光は波長の短い光ということになり
 ます。

 ここで思い出して欲しいのですが、波長が短い紫や青といった光は、途中の
 大気による減光で失われてしまうため、私たちの目にする朝日、夕日の太陽
 の光には残っていません。ですから

  夕日の最後の光は波長の短い光

 といっても、紫や青とはなりません。ではそれよりは波長が長く、黄や赤よ
 りは短い波長の光といえば・・・緑色・・・というのが、グリーンフラッシ
 ュの起こる理由です。

◇グリーンフラッシュを見るのに適した場所
 グリーンフラッシュを見るのに適した場所の条件は、水平線や地平線まで見
 通せるような場所である必要があります。
 こうした場所で、よく晴れて、空気が澄んでいるときであれば、グリーンフ
 ラッシュを目にすることができると思います。

 梅雨が明けて、夏になるときっと海や山など空気の澄んだ場所に出かける機
 会も増えると思いますから、そんなときには意識して朝日や夕日を眺めて、
 この珍しい現象を捉えてみるのはいかがでしょう。

 なお、インターネットを検索しておりましたら、上記の条件にピッタリあう
 ような場所での夕日のグリーンフラッシュの動画を見つけました。

 【NHKニュース】(2024年7月10日)
 石垣島で夕日が沈む瞬間の「グリーンフラッシュ」写真家が撮影
 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240710/k10014506841000.html

 さすが石垣島。
 海に沈む夕日のグリーンフラッシュの様子がよく映っていました。
 この動画のような映像を、自分の目で見ることができると、ちょっと感動し
 ますよ、きっと(私は感動した!)
 ちなみに

 「こんなちょっとじゃなく、もっと長くグリーンフラッシュを見てみたい」

 という方には、絶好の場所と時期があります。
 それは、北極圏や南極圏のような、白夜が起こるような場所。
 時期としては、白夜の期間の始まりの頃と終わりの頃。

 この条件の場所と時期では、日出や日没といった現象が非常にゆっくりと進
 行するからです。こうした条件の下では、日本ではほんの数秒間しか継続し
 ないグリーンフラッシュの状態が、数分間も継続することがあります。

 ちなみに、グリーンフラッシュの観測された最長時間は、1929年10月16日に
 南極大陸(南緯78度付近)で観測された35分間だそうです。

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