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■「雷記念日」に菅原道真と天神様の話
 今日は「雷記念日」。

 この「雷記念日」は学問の神様として受験生の人気を集める菅原道真(と天
 神様)に深い関係のある記念日です。

  菅原道真と雷、どんな関係があるの?

 まずはその関係から読み解いてゆくことにしましょう。

◇菅原道真と祟りの話
 菅原道真といえば、平安時代の貴族(生没 西暦845~903年)。
 学者でありかつ政治家として知られた存在です。

 道真は宇多天皇に信任され右大臣にまで昇りましたが、道真の政治力増大を
 恐れた左大臣の藤原時平によって讒訴され、醍醐天皇によって大宰府へ権帥
 (ごんのそち、太宰府の長官代理のようなもの)として左遷されました。

 ちなみに道真が太宰府に左遷された日、1/25は「左遷の日」という記念日。
 こちらも暦のこぼれ話としては面白い記念日ですが、今回の話とは直接関係
 がありませんので、この話はまたいつか。

  閑話休題

 左遷された道真は、任地の太宰府で無念のうちに没しました。
 するとその頃から京の都では、落雷と落雷が原因となった火災が多発するよ
 うになり、道真を陥れた藤原氏からも大納言の藤原清貴が落雷が原因で死亡
 するという事件が起こります。

 これは清涼殿落雷事件(せいりょうでん らくらいじけん)として知られる
 もので、平安時代の延長八年六月二十六日に起こりました。本日、6月26日
 が「雷記念日」とされたのは、この清涼殿落雷事件の日付けからです。

 ※延長八年六月二十六日をグレゴリオ暦で表すと、西暦930年7月29日となり
  ます。6月26日では、雷の季節にはやや早すぎる気がしますが、旧暦の日
  付けを7月29日というグレゴリオ暦の日付けに変換して考えると、落雷が
  多い時期だということも納得できると思います。

 これは単なる不幸な事故なのですが、やましいことを胸に抱えている方々に
 は、これを単なる事故と片付けられなかったようです。今よりもずっと迷信
 深かった(と思いたい)平安時代の方々だと考えればならばなおさらです。

  これって、何かの祟りかも。
  その何かとは・・・

 大変すぐれた才能を持った人を「天才」といいますが、この言葉は本来は

  天下の鬼才

 といったものを省略した言葉です。「鬼才」というくらいですから、こうし
 た人は、人に絶した能力や霊力を持っていると考えられました。
 道真はこの「天才」と呼ばれるにふさわしい人物でしたから、きっと強い霊
 力を持っていたのではないか? その強い霊力を持った人が怨みを残して死
 んだとすれば

  怨みを残した死 → 関係者への祟り

 となるのではないかと連想は進みます。
 こうなると「身に覚え」のある人たちは、たまりません。落雷事故で死んだ
 藤原清貴のことが他人ごとには思えません。
 祟りが明日は我が身に降りかかるのではないかと不安になります。殊に今回
 の災害は「雷」。雷は

  雷(かみなり) = 神鳴り

 で天の神が発てる音や光だと考えられますから、道真は実は天の神(天神)
 の生まれ変わりで、この人物を策略を持って殺して(実際に殺した訳ではあ
 りませんが)しまったので、神様に戻った道真が祟りを為しているのだと考
 えました。このような経緯から「道真=火雷天神」と考えられ、神格化され
 ていきました。

 さて火雷天神道真の怒りをどうしたら鎮められるかと考えた朝廷は、元々京
 都の北野の地にあり、火雷天神を祀っていた場所に北野天満宮を建立するこ
 とで道真の祟りを鎮めようとしました。

 さらに太宰府にも太宰府天満宮を建立して、なんとか天神道真の怒りを鎮め
 ようとしたのでした。その慌てぶりを見ると、関係者には身に覚えがあった
 ことがうかがえます。

◇天神様は、学問の神様・豊作の神様
 さてこうして元々は道真の祟りを鎮めんがために生まれた天神様信仰でした
 が、今では学問の神様として、また豊作を約束してくれる神様として信仰さ
 れ、全国に分社が出来ています。

 学問の神様となったのは、道真が当代随一と言われるような学者であったこ
 とから、その学徳にあやかったものです。こうした天神様の縁起は知らなく
 とも受験シーズンにお参りしましたという方は、結構いらっしゃるのでは?

 天神様はまた豊作の神様でもあります。
 なぜかといえばこちらは、「雷」からです。

 雷は「稲妻(いなづま)」ともいいます。
 雷は天から地へ向かって真っ直ぐに落ちてくるように見えます。まるで天の
 力が大地に向かって流れ込むかのようです。そしてこの雷が多発する時期は
 稲の花が咲いて実を実らせ始める時期でもあります。

 天の力が雷となって大地に落ちると、それが稲に働きかけて実りとなるのだ
 と古代の人は考えました。雷は正に稲を実らせる「稲妻」だったのです。

 この考えがありましたから、雷神である火雷天神とされた道真を祀る天神様
 は、豊作をもたらす神としても信仰されて、実りの秋ともなれば各地でその
 年の秋の収穫を感謝する祭りの舞台となりました。

 さあ今年、雷の神様、天神様はどれくらい活躍なさるおつもりか?
 これからの夏場が雷のシーズンですから、じっくりと天神様の活躍を拝見す
 ることに致しましょう。

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