日刊☆こよみのページ スクラップブック(PV , since 2008/7/8)

■誕生花と花言葉のはなし(再び)
 「今日は何の日」といったその日付に該当する記念日や過去の出来事などを
 載せた書籍や Webサイトが数多くあります。「今日は何の日」には日毎の誕
 生花も同時に掲載されていることが多いです。半ばそれが定番フォーマット
 となっているのではと思えるほどに。

 かくいう日刊☆こよみのページや、日刊☆こよみのページの大本サイトであ
 る「こよみのページ」にもこの定番フォーマットに則ったコーナーがありま
 す。こよみのページ(Web)では、今日は何の日のページと、そこから派生し
 た今日の誕生花のページがあります。

  「今日は何の日」 https://koyomi8.com/cgi/today/today.php
  「今日の誕生花」 https://koyomi8.com/cgi/today/bflower.php

 今日(6/28)の誕生花としては、

  スカビオサ(西洋松虫草) 悲哀の心・未亡人
  アスチルベ       恋の訪れ
  クチナシ(梔子)    私は幸せです

 の 3種類を載せています。

  なんで一つの日に複数の誕生花があるの?
  そもそも誕生花や花言葉って誰が決めているの?

 きっと誰しも抱くであろう、そんな素朴な疑問から、誕生花とその歴史を読
 み解いてゆきたいと思います。

◇「誕生花」の誕生の歴史
 誕生花はギリシャ時代から古代ローマ帝国時代あたりにその根元があるとい
 われています。

 ギリシャ神話を読めば解るとおり、ギリシャには沢山の神々がいます。日本
 の八百万の神々と同じで、太陽や月、水や空気等々の自然の事物を神と考え
 た自然神の世界です。

 いろいろな「もの」には、それぞれそれを司る神が存在するという考えは、
 さらにさまざまな「時」にも同じように、その時を司る神が存在するという
 考えを生み出しました。例えば『6月を司る神がいるはずだ』とか 『6/28を
 司る神がいるはずだ』と言う考えです。

 こうして、ある日を司る神の存在を意識するようになると、その日に起こる
 出来事にも特別な意味があるのではないかと考えるようになります。その日
 起こった出来事に託して、神が何らかのメッセージを送っているに違いない
 と考えるからです。

 この考えからすると、ある月、ある日に咲く花は、その月や日を司る神から
 のメッセージを伝えているにちがいないと考えるのは自然なことでしょう。

 もっとも、来る日も来る日も毎日、神からメッセージを読み解いて生活しよ
 うとしたらこれは大変ですから、「御神託」に耳を傾けるのは特別な記念日
 だけにしましょう(と私のようなものぐさなら考えるはず)。

 では、誰にでもある特別に切な記念日といったら・・・誕生日です。
 人間にとって、誕生というのは多分一番大切な記念日ですから、こんな大事
 な日が、ただの偶然に決まるとは考えたくない。

 自分が生まれたことには何かの意味があって、その意味にふさわしい日に生
 まれたに違いないと誰しも考えます(あるいは、考えたい)。誕生日とは、
 その日に生まれた人の運命を象徴する日なのであると考えるのです。世の中
 には様々な『誕生日占い』がありますが、それらが生まれた理由の根幹には
 この思想があるのでしょう。

 誕生日がその日に生まれた人の運命を象徴する日だとしたら、この日が象徴
 する運命がどのようなものか、知りたいと思うのが人情でしょう。では、ど
 のようにすればそれを知ることが出来るか?

   そうだ、自分の生まれた日を司る神からのメッセージを読み解こう!
 
 既に説明したように、ある日に咲いている花にも神のメッセージが込められ
 ているわけですから、誕生日に咲く花を見れば、神が送った自分へのメッセ
 ージを知ることが出来る! そう考えた結果として『誕生花』が生まれたの
 でしょう。

 ただし、そのメッセージは「神秘のベール」に包まれていますから、象徴的
 ・抽象的なものが多いのでは、神の真意を読み解くのは大変です。一生かけ
 て読み解かなければならないくらい(「それが人生」なのかも)。

◇「花言葉」の歴史
 花言葉の歴史というと、現在のように使われるものの歴史は意外に浅く19世
 紀のヨーロッパの宮廷での流行がその始まりだと考えられています。ただし、
 「花言葉」という考えは、オスマントルコ帝国のイスタンブール生まれと言
 われます。

 18世紀にイスタンブールに滞在した人物が、このトルコ生まれの概念をヨー
 ロッパに持ち込んだものだと言われます(コンスタンティノプール駐在英国
 大使婦人 Mary Worltey Montaguや、トルコに 4年間滞在した紀行家Aubry de
  La Mottrayeが伝えたと言われています)。

 花言葉は外国の洒落た風習として、まず宮廷や社交界で使われるようになっ
 たようです。ことにフランスのシャルロット・ド・ラトゥール(Charlotte de
 Latour)が『Le Langage des Fleurs』(「花の言葉」)を1819年に出版した
 後、広く受け入れられるようになったようです。

  直接言葉で思いを伝えるのではなく、花を贈ることで思いを伝える。

 こう書くと、何ともロマンチックな雰囲気。
 このロマンチックな雰囲気が社交界で人気となって広がったようです。その
 ためか花言葉には恋愛や人間関係、人物評という社交界の話題の中心を成す
 言葉が多いです。

 また全体に園芸種(ことにヨーロッパの)には多様な言葉がついているのに
 よく見かける花でも野生の花(ことに、日本にはあってもヨーロッパには無
 さそうなものや、見た目がぱっとしない植物)には花言葉が見あたらないこ
 とが多いのも、花言葉のこうした歴史の故でしょう。

 ※日本での新しい花言葉について
  日本花普及センターが花の愛好と普及の目的で親しみやすく佳いイメージ
  の花言葉を選んでいるそうです。
  もちろん、日本花普及センター以外が、花言葉を選んではいけないという
  ことではありません。

◇沢山の誕生花・いろいろな花言葉
 日刊☆こよみのページの誕生花をごらん頂ければ解るとおり、 1日に何種類
 もの誕生花があります。また、花言葉も沢山(中には相反するようなものも)
 ありますが、なぜでしょう。
 この質問はよく頂くものなのですが、その理由は

  だって、沢山あるんだもの

 と言うしかありません。
 ある日に咲く花といったって 6/28には咲くけれど 6/29には咲かないなんて
 いう花はありません。そうした意味で誕生花選定の段階で既に曖昧さがあり
 ます。

 またヨーロッパでは一般的でも日本では咲かない花であったり、なじみの薄
 い花だったりしますから、何処で生まれた言葉かによっても変化する余地が
 あります。こうして考えて行くと最終的には、

  誕生花は選ぶ人によって変化する

 と言うことになってしまいます。
 同様に花言葉も花自身が「私の花言葉は・・・」と語ってくれるわけでない
 ので、

  花言葉は、誰かの創作である

 ということで、創作ですから人によって変わって当然。創作者の発想は当然
 その人の生まれ育った国の歴史や伝統に大きく影響を受けますし、その人の
 好みもありますから、一つの花に違った複数の言葉が付いてしまうのも致し
 方ない。こうして

  沢山の誕生花・いろいろな花言葉

 となってしまいました。
 誕生花を載せるようになってから、「誕生花」といった文字がタイトルに入
 った本を目にすると気になって購入してくるようになり、その手の本は十冊
 以上(二十冊以上かも)となってしまいましたが、見事にまちまちです。
 希に、良く一致する本もあるのですが、これは逆に「共通の種本」があるっ
 てことなんでしょう。

◇最後に、「こよみのページでは?」
 私の場合は、誕生花が 1年分入っている本 3冊を基本にして拾い出し、過不
 足を他の本を参考として追加修正しています。
 どの本もまちまちなので、選んでいて結構「混乱」しました。正直思いの外
 大変な作業でした(今も、時々追加修正しています)。

 ちなみにですが、かわうその誕生花(3種)についたそれぞれの花言葉を拾
 ってみると

  魅惑的/危険な戯れ/密かな情熱

 でした。
 うーん、この3つの言葉が象徴する私の人生って・・・。
 「神意」とはあまりに奥深い。
 読み解くために、一生をかけなくては(無駄かもしれないけど)。

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