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■「月の出ている時間」の長短と季節(2) 『「月の出ている時間」の長短と季節』については、前回(10/22号)で ・(季節変化に)規則性はある。 ・満月について考えると、月時間は昼時間と逆の季節変化をする。 という結論を示しました。 ちなみにここで、「昼時間」「月時間」という見慣れない言葉が登場してい ますが、これは 昼時間:日出~日没までの時間 月時間:月出~月没までの時間 を表す言葉として私が作った造語です。 さて、この結論で読者の方からの疑問に始まったこの話は、大団円を迎えた ように見えますが、そうではありません(だから本日も書いているわけです ね)。結論として書いた2つの事柄、特に2番目、をよく御覧ください。 「満月について考えると」 月の出ている時間の話なのに、「満月」に限定して書いていますね。 これでは完全解決とはいえませんので、本日はこの限定を解除していきたい と思います。 ◇満月以外の月時間の変化 太陽は、黄道と呼ばれる天球上の道筋を一年かけて移動し、月は、白道と呼 ばれる道筋を移動しています。この黄道と白道は大きく離れることがないこ とから、話を複雑にしないために月も太陽も黄道上を移動するものとみなし て話を進めます(前回と同様の条件です)。 ここからは少々復習になります。 前回はこの条件で満月の際の月と太陽の位置関係を考えてみました。満月の 時、月は黄道上で太陽から180度、つまり真反対の位置に在りますから 夏至の頃の満月での月の位置は、冬至の頃の太陽の位置 冬至の頃の満月での月の位置は、夏至の頃の太陽の位置 にあるので満月の月時間は 夏(夏至の頃)は短く、冬(冬至の頃)は長い という、昼時間とは反対の季節変化をするのです。 さて、復習はここまでにして、ここからは一歩話を進めましょう。 満月の時の月の黄道上の位置は太陽と真反対となるわけですが、では満月以 外のときの月の位置は? まず考えやすい例として新月を考えてみましょう。 ご存じのとおり、新月の時に月は太陽とほぼ同じ位置にあります。月と太陽 が重なって起こる日食が、必ず新月の時であるのはこのためです。これに気 がつけば話は簡単です。新月の時の月時間は昼時間と同じ季節変化をするの です。つまり 夏(夏至の頃)は長く、冬(冬至の頃)は短い となります。 では、上弦・下弦の半月については? もうおわかりですね。 半月の時、月と太陽の黄道上の位置は90度離れ手いるため、月時間の季節変 化は昼時間の季節変化と季節ひとつ分ずれます。 上弦の月:春(春分の頃)は長く、秋(秋分の頃)は短い 下弦の月:秋(秋分の頃)は長く、春(春分の頃)は短い という変化をします。 このように満月・新月・上弦・下弦の月の月時間の季節変化から、月時間の 季節変化について一般化すれば ・(季節変化に)規則性はある。 ・月時間の長短の季節変化は、月相(月の満ち欠けの状況)毎に異なる となります。 ◇月時間の変化の周期 ここまで、月時間の季節変化の話を書いてきましたが、結論を見ると「月相 毎に異なる」と、わかったようでよくわからない結論になってしまっていま す。きっと、「モヤモヤ」している方も多いと思います。このモヤモヤが生 ずる理由は、季節変化にこだわったからです。 私たちが体感的に知っているように、昼時間の変化の周期は1年、つまり四 季の一巡りの周期で起こりますので「季節変化」として捉えられます。 この考えに影響されて、月時間の変化も「季節変化」としてとらえると、前 述したような結論となってしまいます。 「月は月、太陽は太陽。すっぱり分けて考えよう!」 と考えるとスッキリします。 では、スッキリさせましょう。 月相の違いは考えず、毎回の月時間の長短変化を追いかけてみると、次のよ うになります(例は、2025/10/25~11/24の期間。計算地点は東京)。 日付 月時間 10/25 9.36時間 10/26 9.22時間(極小) 10/27 9.27時間 (中略) 11/08 15.56時間 11/09 15.63時間(極大) 11/10 15.38時間 (中略) 11/22 9.27時間 11/23 9.26時間(極小) 11/24 9.43時間 上記データでは、月時間の長さをグラフ化すれば谷となる日を「極小」、 山となる日を「極大」として示しました。こうした周期変化の周期は一般的 に極小から極小(または極大から極大)の長さで示されますから、上記の例 では、10/26~11/23(28日)で1周期の変化をしたことになります。 この周期の長さは1回だけの値だとばらつきも出てしまうので、もっと長い 期間で調べて平均してみることにします。これはなかなか大変な作業ですの で、みなさんに代わって私が2000年から100年分のデータを求めて平均しまし た。その結果得られた周期は、27.32日となりました。 あれれ、この数値は「恒星月」の長さじゃないか。 恒星月とは月が地球の周囲を公転する公転周期の長さです。 考えてみればあたりまえのことです。 昼時間の変化は太陽が黄道を一巡りする周期(1年≒地球の公転周期)で変 化するのなら、月時間も月が黄道を一巡りする周期である月の公転周期で変 化するのです。 つまり昼時間の変化の周期は1年なので、その変化は「季節変化」ととらえ られるのですが、月時間の変化はずっと短い周期で起こっているのです。 言い方を変えれば、太陽が365日あまりかけて巡る黄道を、月はわずか27日 あまりで駆け抜けてしまうのです。 ※月の公転面は黄道面と一致しませんし、地球の公転周期も厳密には太陽が 黄道を一巡する周期とは一致しません。そうしたものの影響はごく小さい ものなので、今回の説明では無視しています。 月時間の変化は概ね27.3日周期で変化するのですが、これに対して月の満ち 欠けの周期は概ね29.5日で2.2日程長いために、両者の関係は月の満ち欠け 1回毎に、この差の分だけずれていきます(遅れる方向に)。前掲の月時間 が極小となった日のデータに、その日の正午月齢も加えて示すと 10/26 9.22時間(極小)・・・正午の月齢 4.6 11/23 9.26時間(極小)・・・正午の月齢 2.8 となります。月齢は必ずしも月相変化を正確に表すものではないことはご存 じのとおりですが目安にはなりますので、10/26の月齢に対して11/23の月齢 が1.8小さくなる(月齢が遅れる)ことを確認することが出来ます。 ここまでわかると、この数値を使って月相による月時間の季節変化も説明す ることが出来るようになります。 例えばある満月の日に、月時間が極大となったとすると、満月の月齢は14.8 前後ですので、月齢がゼロ(0)、つまり新月の頃に月時間が極大になるのは 月時間変化の27.32日の周期と月齢の2.2のずれから 14.8 ÷ 2.2 × 27.32 ≒ 184(日) となることがわかります。 この184日は、ほぼ半年(182.6日)にあたりますので、満月と新月の月時間 の季節変化が正反対になってしまうのです。 ◇最後に いかがだったでしょう? 「月の昇っている時間(月時間)」というと、私たちは月が肉眼で確認でき る夜とその前後のことばかり考えがちですので、昇っている間中月が見える 満月の前後ばかり意識してしまいがちです。 そうなると、「月が昇っている時間が一番長いのは冬で、短いのは夏」とい う季節変化をするように思いがちですが、今回は見える見えないではなく、 月が地平線より上にある時間について考えることで、原理の上からこの問題 を考えてみました。 原理がわかれば、「月時間は冬が長くて夏が短い」という思い込みも満月に 限っては正しい(逆に言えば、それ以外では間違い)ことがご理解いただけ たのではないでしょうか? 面倒くさい話ですが、一度しっかり考えておくと、おかしな誤解をしないで 済むと思いますので、書いてみました。 長い話にお付き合いいただき、ありがとうございました。 今回の話、文章で読むだけだと分かり難い(書く方も大変)ですので、2025 年の月時間の全体変化、新月・上弦・満月・下弦の四相の月時間の変化をま とめたグラフを次のURLに載せておきますので、あわせて御覧ください。 月時間変化 https://koyomi8.com/doc/mlwa/img/moontime_2025_s.png なお、今回は黄道と白道の傾きの差とその変化によって生じる月時間の数年 ~十数年の変化などもを採り上げることはなかったのですが、こうした話も いつかどこかで採り上げてみたいと思います(テキストのみのメールマガジ ンでは難しいところもあるので、Web記事となるかも知れませんが)。 またその時には、お読みいただけたら嬉しいです。
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