土用丑の日(ウナギの日?)
土用丑の日(ウナギの日?)
 土用といえば丑の日。
 2000年のある日、こよみのページに質問のメールが届きました。

  「土用はわかるが丑の日ってのはどうして決まるの?」 

本当はもっと丁寧な文章でしたが、内容はこのとおり。では、早速ご質問の土用丑の日について書いてみることにします。

土用とは? (ちょっと解説)
 土用とは、四季の終わりの18日(または19日)の期間のことで、四季それぞれに土用があります(つまり年に4回の土用がある)。夏の終わりの土用なら「夏土用」のように区別して呼ぶこともあります。
 なお、後に述べる五行説ではこの期間は「土(の性質)」が支配するとされたことから、「土用」と呼ばれます。詳しくは

土用のはなし

をお読みください。また、土用の期間の詳しい日付を知りたい場合は

土用と土用の間日、丑の日の計算
 
をご利用下さい。

土用の丑の日
 丑の日の「丑」は十二支の「子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥」の丑です。「今年は辰年」などと言うように年には今でも十二支を割り振ることが行われていますが、十二支は日付や時刻、方角などにも適用されていて、12日に1度は「丑の日」がやってきます。
この日付に割り振られた十二支は現在の曜日と同じで、順番が入れ替わったりしませんので、こまめに日付を数えてゆけばいつが丑の日かを知ることが出来ます。
 
土用丑の日とウナギ
 鰻の蒲焼き夏の土用の時期は暑さが厳しく夏ばてをしやすい時期ですから、昔から「精の付くもの」を食べる習慣があり、土用蜆(しじみ)、土用餅、土用卵などの言葉が今も残っています。また精の付くものとしては「ウナギ」も奈良時代頃から有名だったようで、土用ウナギという風に結びついたのでしょう。
 今のように土用にウナギを食べる習慣が一般化したきっかけについては、諸説ありますが、その中でも有名なのが、江戸中期の万能学者(博物家)として有名な平賀源内(1728-1779年)が関わったとされる話です。夏場にウナギが売れないので何とかしたいと近所のウナギ屋に相談された平賀源内が、「本日丑の日」と書いた張り紙を張り出したところ、大繁盛したことがきっかけだと言うものです。

 この話は比較的よく知られた話なのですが、私には納得いかない点があります。「本日丑の日」と書いただけでなぜ大繁盛したのか? 謎です。

後日・追記 2004.07.20
この疑問になるほどと思える解釈を、長崎のF.Mさんから教えて頂きました。
 「本日丑の日」
と書いたことにより、好奇心旺盛な江戸っ子が
  • 熊さん  なんだい、土用の丑の日ってのは?
  • 鰻屋さん へい、昔から土用の丑の日といえば、うなぎてことになってやして
  • 熊さん  へえ、知らなかったな。八つぁん、おめえ知ってたかい
  • 八つぁん あたぼうよ、一つ焼いてもらおうと思ってたところじゃねぇか
    (注:もちろん八つぁんがそんな話しを知っているはずはない。知ったかぶり)
  • 熊さん  さすが八つぁんは物知りだ。よし親爺、俺にも一つ焼いてくんな
  • 鰻屋さん へい、毎度ありがとうござい!

という具合に、この張り紙がきっかけで口コミで鰻が売れるようになったとか。なかなか人間の心理を突いたうまいやり口です。
 残念ながらこの話、F.Mさんも出典は不明と書いていらっしゃいました。いずれどこかで見つけたら、また補足したいと思います。F.Mさん、ありがとうございました。

なお、鰻屋・熊さん・八つぁんの会話は、かわうその創作です。悪しからず。

なぜ丑の日なのか?、鰻(ウナギ)なのか?
 それにしてもなぜ「丑の日」で「卯の日、寅の日・・」でないのか。そしてなぜ鰻をたべるのか?
 この辺の謎については、なるほどと思う説があります。五行の組み合わせによる呪術説がそれです(「陰陽五行と日本の民俗」(吉野裕子著))。

 夏の土用の季節とその節月(節切の暦月)の関係を考えます。節月とは二十四節気の節気(立春、啓蟄、・・・小暑、立秋、・・・小寒)で区切られた暦で、占いや季節の変化と結びついた農耕の目安として使われる暦です。この節月と季節の関係はつぎのようになります。
  • 春(立春~):正月(寅)・二月(卯)・三月(辰)
  • 夏(立夏~):四月(巳)・五月(午)・六月(未)
  • 秋(立秋~):七月(申)・八月(酉)・九月(戌)
  • 冬(立冬~):十月(亥)・十一月(子)・十二月(丑)

五行と丑の日()内の文字は、それぞれの月を表す十二支の文字です(ちなみに、元々十二支は、12の暦月を表すための特殊な数詞として使われたものなのです)。
この節月では、夏土用は六月(未月)に含まれます。夏土用のある未月は夏の季節の最後の暦月で、季節と未月の五行の関係を見ると
  • 直前の季節 夏 (火性)
  • 節月    未月(土性)
となります。

五行の相生(そうしょう)と相剋(そうこく)
説明に登場する「相生」と「相剋」について簡単に説明します。

相生には「木生火・火生土・土生金・金生水・水生木」の5つがあり、「○は□を生ずる」という関係で相性のよく、その性質を強める関係を表すものです。
例えば「火生土」で、「火が燃えて灰(土)を生み出す」といった関係を表します。

相剋は「木剋土・火剋金・土剋水・金剋木・水剋火」の5つがあり、「○は□に剋(か)つ」という関係で相生は悪く、その性質を損なう関係を表します。
例えば「水剋火」で、「水は火を消す」といった関係を表します。

五行説は、万物に備わった木火土金水の5つの性質の組み合わせによって森羅万象を説明しようという古代の哲理です。

 夏の土用(未月にある)の土性は、季節と節月の五行の「火生土(火は土を生ず)」という関係から、非常に強くなり、五行の調和を乱すことから、人間にも暑気あたりや、夏ばてのような悪影響が出てしまうのではないか。そうであれば「火生土」で突出してしまった力を呪術的に押さえ込めれば、五行の調和を取り戻すことができて、悪影響を取り除くことも出来るのではないかと考え出されたのが「土用の丑の日」なのではないかと、吉野先生は考えました。

 ここで「丑の日」が登場します。暑気あたりなどをもたらす夏の「火性」を「水剋火」の関係にある水性で押さえ込むため、水性の季節である冬の土用の月である丑月の性質を夏土用の中に埋め込もうというのです。とはいえ、未月に丑月を埋め込めるはずはないので、丑月の代わりに丑の日で代用したのではないかというのです。
 さらに吉野先生は、この丑の日に鰻を食べるのも
  • 鰻は水中に住む生き物(水性)
  • 鰻は黒い(黒色は五行では水性)
  • 「鰻(うなぎ)」と「丑(うし)」は「う」で通じる
ということで、火性を水性で押さえ込む呪術には最適な食べ物だと考えたのです。

土用の牛の日? もともと夏やせには鰻がいいことは、万葉集の昔から知られていたもので、これが五行説的にもぴったりだということで呪術の道具に加わったのだろうと考えられます。鰻ほど有名ではありませんが、土用丑の日には、蜆(水の中の生き物で、色は黒い)を食べるという慣習があります。また、この日に牛を川で洗ってやるという風習があったとも言いますので、「水剋火」の呪術説は説得力のあるように思えますが、いかがでしょう?

吉野裕子先生の「陰陽五行と日本の民族」では、未月は「旧暦の未月」となっていたのですが、これだと土用の期間が全て未月に含まれるというのはおかしい(そうでない場合がある)ので、私がこの説明を書くにあたっては、この未月は「節月の未月」としました。

 最後に、最近の十年の土用(夏の)の入り・明けと丑の日の一覧を示します。丑の日が12日に1度、土用の期間が18日または19日ですので、丑の日が2回ある年もあり、そんな場合は「一の丑」「二の丑」と言います。こんな時には特に断らず「土用丑の日」といった場合は、「一の丑」を指すようです。
この表の範囲外の値は土用と土用の間日、丑の日の計算で計算出来ます。
西暦年 土用入 土用明? 丑の日(干支) 二の丑(干支)
2020 7月19日 8月6日 7月21日 乙丑 8月2日 丁丑
2021 7月19日 8月6日 7月28日 丁丑    
2022 7月20日 8月6日 7月23日 丁丑 8月4日 己丑
2023 7月20日 8月7日 7月30日 己丑    
2024 7月19日 8月6日 7月24日 己丑 8月5日 辛丑
2025 7月19日 8月6日 7月19日 己丑 7月31日 辛丑
2026 7月20日 8月6日 7月26日 辛丑    
2027 7月20日 8月7日 7月21日 辛丑 8月2日 癸丑
2028 7月19日 8月6日 7月27日 癸丑    
2029 7月19日 8月6日 7月22日 癸丑 8月3日 乙丑
2030 7月19日 8月6日 7月29日 乙丑    

※記事更新履歴
初出 2000/07/10
修正 2008/07/16 (文章加筆修正)
 〃 2014/07/12 (画像追加・土用の日付表更新)
 〃 2020/05/05 (画像修正・土用の日付表更新)
 〃 2026/07/15 記事の加筆修正
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