一月に二度の月見のできる月
お月様 月は地球の天然の衛星です。
 それが地球の衛星だなんてわからない時代から、沢山の人がこの「月」を見上げ

 お月様 

と呼ばれて親しまれてきました。
お月様は、新月の前後二三日を除けばどの季節でも見える見やすい天体です。
そんな何時でも見えるお月様ですが、そんなお月様を見るにも「旬」の季節があるようです。その旬は何時かと云えば、それは秋。
俳句の世界でも「月」といえば秋の季語です。

 「いやいや、私にとっては月と云えば冬です」

と仰る方もいるでしょうけれど、まあここでは個人的な好みは押さえて、「月と云えば秋」と言うことにして話を進めさせてください。

三つの月見 
  • 三つの月見とは? 
     月と言えば秋、秋の月と言えば月見。まずは秋の月見(一つは初冬?)について。

     月見というと、もっともよく知られているのは旧暦の八月十五日の月(十五夜の月)、中秋の名月の月見でしょう。
    中秋の名月の月見は有名ですが、これがあまりに有名すぎて少々霞んでしまうのですが、この月見の他にも比較的広く行われていた月見の風習があります。一つは後の月と呼ばれる九月十三夜(旧暦)の月見で、もう一つは三の月とも呼ばれる十月十日(旧暦)の月の月見です。
    知名度で考えると、

      中秋の名月 > 後の月 > 三の月

    という具合でしょう(三の月となると、知っている人のほうが珍しいくらい知名度が低いかも)。
  • 月見の日取り 
     この三つの月見の日取りはどうやって決められているかというと、いずれも旧暦の日付に依っています。これは月の満ち欠けを元にして組み立てられた太陰暦の一種である旧暦が使われていた時代の慣習だからです。
    お月見 それぞれの日取りは次の通り。

      中秋の名月 ・・・ 旧暦八月十五日
      後の月 ・・・・・ 旧暦九月十三日
      三の月 ・・・・・ 旧暦十月十日

    この日付から、それぞれの月を十五夜の月十三夜の月十日夜の月などとも呼びます。
    十三夜とか十日夜の月という名前でおよそ見当がつくと思いますが、中秋の名月以外は満月ではありません(中秋の名月も今で言うところの満月とは限りません。この件は中秋の名月はいつ?(旧暦の十五夜は満月か?)を参照のこと)。それぞれの月見の月の形を、およその感じをつかむために画像で示せば次のようになります。
    それぞれの月見の月
    十五夜の月十三夜の月十夜の月
    十五夜 十三夜 十夜
  • 四つ目の月見? 
     さて、三つの月見の月の説明をしてきましたが、時々ですが月見が四回も出来てしまう年があります。それは旧暦の八月、九月、十月のいずれかに閏月がある場合です。旧暦では大体三年に一度くらいの割合で「閏月」という臨時の月が挿入されて一年が十三ヶ月になることがあります。この閏月はいつも同じ月にはいるわけではありません。
     閏月が挿入される場合、例えば八月と九月の間に閏月が入ると、その閏月は

      閏八月

    と呼ばれます。中秋の名月は八月十五日の月ですが、もし閏八月がある年だと、八月十五日の他に閏八月十五日もあるわけなので、閏八月十五日の月もまた中秋の名月なのではないかと考えられます。旧暦時代には実際にそうしたことがあったので、

      八月と閏八月のどっちで月見をすればいいの?

    秋の膳と考え込む人もいたはずです。考え方によって、答えはいろいろになると思いますが、その一つの考え方に

      月見は目出度く楽しい行事なのだから、二度やってもいいじゃないか

    というものがあり、二度とも月見をしたという記録が残っています。
    私もまあ無理にどちらか一方にする必要もないだろうと思いますので、この考え方に従うこととすると、時々中秋の名月から三の月までの月見が四回出来る年が生まれるわけです。この年が何時かは八月、九月、十月のいずれかに閏がある年を探せばよいので、簡単にわかります。1950〜2069年までの120年間でこうした年を探すと、次のようになります。

     閏八月の有る年:1957,1976,1995,2052
     閏九月の有る年:2014
     閏十月の有る年:1984

    現在(2009年)に一番近いのは2014年。この年は後の月が二度有る年となります。
月見が二度できる月 
  • 一月に二度月見ができる月 
     さて、長い前説明が終わってようやくこの説明文のタイトル、

      月見が二度できる月

    にたどり着きました。二度できる月の「月」は天体の月でも、旧暦の暦月でも有りません。新暦の暦月のことです。既に説明してきた秋の三つの月見は、その日取りが旧暦の日付で決まっていました。中秋の名月、後の月、三の月それぞれの間隔を考えてみます。旧暦の一月は、30日(大の月)か29日(小の月)のどちらかですから

     A.中秋の名月(旧8/15)〜後の月(旧9/13)・・・28日か27日
     B.後の月(旧9/13)〜三の月(旧10/10) ・・・・27日か26日
     C.本来の月の月見〜閏月の月見・・・・・・・・・30日か29日

    三つの月見の日は新暦の9〜12月の期間に有ります。この間の新暦の暦月の日数は30日か31日のいずれかですからA, Bは新暦の暦月の日数より 1日以上短いので、新暦の一つの暦月に二つの月見、例えば中秋の名月と後の月の両方が新暦の10月に有ると言うことが考えられます。Cにしても、同様の可能性は有ります。
一月二度の月見が出来るわけ
  • 一月に二度の月見となる原理 
    上の図は、その状況を説明したものです。
    図の中の「ア」のパターンが普通の年の状態の例で、「イ」が一月の間に二度の月見があるパターンです。
    「イ」の中秋の名月と後の月は、どちらも新暦の10月の期間中にあるのが判ります。
  • 一月に二度の月見は珍しい? 
     さて、これも1950〜2069年までの120年間について調べてみました。その結果は次の通り。

     1952,1960,1963,1968,1971,1979,1982,1987,
     1990,1998,2001,2006,2009,2017,2020,2025,
     2028,2031,2036,2039,2044,2047,2052,2055,
     2058,2063,2066

    全部で27回ありました。
    27/120 ですから4〜5年に一度ということになります。
    これは、珍しいと言うべきか否か。なかなか難しいところですね。
    まあ、ちょっと珍しい・・・と言うことにしておきましょうか。
  • 近年の「一月で二度の月見」 
    一月二度の月見の日取り
    ◎中秋の名月 ○後の月 ●三の月
    9月10月11月12月
    2009 ◎ 3,○30●26 
    9月10月11月12月
    2017 ◎ 4○ 1,●27 
    2020 ◎ 1,○29●24 
    2025 ◎ 6○ 2,●29 
    2028 ◎ 3,○30●25 
    2031 ◎ 1,○28●24 
    2036 ◎ 4,○31●27 
    2039 ◎ 2,○30●25 
    2044 ◎ 5○ 2,●28 
    2047 ◎ 4,○31●26 
    9月10月11月12月
     最後に現在(2009)〜2050までの一月で二度の月見の有る年の、月見の日付を右に示します。 表の中の◎○●は、

     ◎:中秋の名月
     ○:後の月
     ●:三の月

    を表します。その記号の後ろに有る数字が日付です。
    2009年の例では、

     中秋の名月・・・10/ 3
     後の月・・・・・10/30
     三の月・・・・・11/26

    となり、10月には中秋の名月と、後の月の二つの月見があることがわかります。
    一月で二度美味しい月見月というところですね。
余談
天然の衛星
 今回の話題の冒頭で、お月様のことを「地球の天然の衛星」と書きました。ちょっと違和感を覚える表現かもしれませんが、最近は天然でない衛星(つまり「人工衛星」)なんてものがたくさん打ち上げられておりますため、単に衛星というとこうしたものまで含んで考えられることが有るようになりました。
 まあ、本日の「月見」の話で人工衛星を思い浮かべる人は流石にまだいないでしょうけれど、ちょっとこのあたりを意識して、「天然の」とつけてみました。
 
明日は後の月
 これを書いているのは2009/10/29。明日はこの10月 2度目の月見、後の月見の日です。この日に合わせて、もう少し早くに書き始める予定でしたが、気が付いたら直前でした。
まあ、いつものこと。ギリギリでも間に合ってよかったとしておきますか。

それはそうと、この記事を書くために1950〜2069年までの三つの月見の日取りを計算して表にまとめました。役に立つという方もいらっしゃるかもしれませんが、今日の説明中に全部を入れるには多すぎますので、こちらの月見の日取表(1950〜2069)という別のページに残しておきますので、興味のある方はご覧下さい。
※更新履歴
初出 2009/10/29
更新 2020/09/23 画像追加
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