旧暦の月の決め方
旧暦の月の決め方
 現在使われている新暦では、「6月の次が7月で、7月は31日まである。」なんて言うことは誰でも知っていることで、別段カレンダーを見なくても判ります。ところが旧暦ではことはそう簡単には行きません。6月の次が7月ではなくてもう一度6月だったり、その暦月の末日(晦日:みそか)が29日であるか30日であるかは暦がないと一般の人々には判らないものだったのです。
 では、早速、不思議な旧暦での暦月の決め方を見ていきましょう。
  1. 月の始まりを示すものは「朔(さく)」
    旧暦は、太陰太陽暦ですので、暦月のはじめは月(こちらは空の上のお月様)が新月(朔)を迎えた日と定まっていました。「三月朔日」といえば三月一日を表します。月が朔を迎えてから次の朔を迎える間での長さ(日数)を朔望月(さくぼうげつ)といいます(次の図のとおり)。
    朔望月とは
     朔望月の長さは平均すると約29.53日となります。ただ「3月は29.53日まである」というように、暦月の日数に小数点以下の数字がついていては、実生活上でいろいろと支障を来すことでしょうから、実際には1ヶ月はこの29.53日の前後の整数である日数、29日か30日のいずれかの日数をとり、これを適度に暦月に割り振ることになります(ちなみに旧暦の暦月には、28日や31日という日数はありません)。

  2. 月の名前を決めるものは「二十四節気の中気」
     今でも立春、春分、夏至、大暑、寒露等々季節を表す言葉として耳にする二十四節気(にじゅうしせっき)。この二十四節気が旧暦の月の名前を決めるのに重要な役割を果たしています。二十四節気には「節」と「気」(または「節気」と「中気」。中気は単に「中」とも書かれます)があり、交互に並んでいます。「節は季節を分けるもの、気は月の名前を定める」とされ、それぞれ正月節、正月中、二月節・・・十二月中とも区分されています。二十四節気の区分けは下の表をご覧ください(なお、()内に書いた日付はその節・中の始まりの、およその月日を示しています)。


    暦月正月(一月)二月三月
    節気立春(2/04頃)啓蟄(3/05頃)清明(4/04頃)
    中気雨水(2/19頃)春分(3/20頃)穀雨(4/20頃)
    暦月四月五月六月
    節気立夏(5/05頃)芒種(6/05頃)小暑(7/07頃)
    中気小満(5/21頃)夏至(6/21頃)大暑(7/22頃)
    暦月七月八月九月
    節気立秋(8/07頃)白露(9/07頃)寒露(10/08頃)
    中気処暑(8/23頃)秋分(9/23頃)霜降(10/23頃)
    暦月十月十一月十二月
    節気立冬(11/07頃)大雪(12/07頃)小寒(1/06頃)
    中気小雪(11/22頃)冬至(12/21頃)大寒(1/21頃)

     なお、二十四節気の日付は年によって1日程前後します。その年の日時については、このHPの「 二十四節気」で計算する事が出来ます。旧暦の月はこの「○月中」を含んだ月を、「○月」とするのが原則でした。例えば、二月中気の春分を含む月が「二月」となります。

  3. 「閏年は1年が13ヶ月」・閏月(うるうづき)の話
     1月が29日または30日であるとすると、仮に交互に29日の月、30日の暦月が並べば、1年(12ヶ月)は、(29+30)×(12/2)=354日あまりとなります。しかしこれでは実際の1年(365.2422日)に10日以上も日数が足りません。そこで約3年に1度「閏月」を設けてそのずれを補正します。閏月は原則として「暦月の内に中気を含まない暦月」に置くことになっております。どういうことかというと、
    二十四節気のうち、中気は全部で12あり、だいたい等間隔にあります(現在旧暦と言っている暦では等間隔とはならないのですが、ここでは話をわかりやすくするため等間隔だとして話を進めます)。すると、中気と中気の間隔はざっと
      365.25日/12≒30.44日
    となります。
    すでに書いたように平均朔望周期は約29.53日ですので、中の間隔の方が朔望周期より1日弱長いため、「朔から朔(新月から新月)」までの朔望周期の間に1度も中気が現れないことが、およそ33〜34朔望周期毎に一度起きます。この場合、この朔望周期にあたる1ヶ月を閏月とします。
    閏月が出来るわけ 中気の間隔と朔望月の比較
    中気の間隔(30.44日)中気の間隔と朔望月の長さ比較
    朔望周期(29.53日)

    閏月の場合、暦月の名前を決める中気を含みませんので「月名」が決まらないことになります。そこで直前の暦月の名前に「閏」とつけて「閏六月」のように表します。つまり約3年に1度は13ヶ月の年が現れる訳で、この年は1年が384日前後となります。その状況を示したのが次の図です。この図では、平年と六月の後に閏六月が挿入された場合の閏年の1年の日数の長短を示したものです。ちなみに、旧暦の1年の日数は、平年は 353〜355日閏年は 383〜385日です。
    平年と閏年の1年の長さ比較
     なお、旧暦と呼ばれる暦は「天保暦」の定めた置閏法(ちじゅんほう:閏を入れる規則)に従っていますので、正しくは上記3のように閏月が確定出来ない場合があります。この辺の事情は多少複雑になりますので、その説明はまた別の記事に譲ることにします。悪しからず。
     それにしても1年が354日だったり385日だったり、実際に使うものからすると、なんだか扱いにくい暦だとは思いませんか?
 今回の「旧暦の月の決め方」の話は以上です。さらに具体的な旧暦の作暦の仕組みを知りたいという方は
 ・旧暦と六曜を作りましょう
をお読みください。
※記事更新履歴
初出 2001/01/20
修正 2003/07/10(リンク追加)
修正 2023/01/02(表の形式修正、文章の小修正)
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