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二十四節気の誕生
    立春、雨水、啓蟄、春分、清明・・・。
 単調な暦の上に、季節感を与えてくれるこれらの言葉を二十四節気といいます(昔は「二十四気」と言いました)。たまに、二十四節と書かれていることがありますが、節気ですので、お間違いなく。
 二十四節気それぞれの意味については、二十四節気とはを、各年の日付を知りたい場合は、二十四節気計算をご覧下さい。

 この二十四節気は、中国発祥の太陰太陽暦(いわゆる旧暦もその仲間)において、季節と暦を結びつけるための目印として考案されたものです。その歴史は古く、遙か殷の時代まで遡るとも言われています。

●二十四節気誕生前夜
 時間の経過を測り、過去を記録し未来を予測するために「暦」が作られるようになると、この作成のために利用出来る規則的な変化としてまず、着目されたのは「月の満ち欠け」でした。
 月の満ち欠けが12回ほど繰り返されるとほぼ1年になると言うことはかなり早い時期から知られていたと考えられます(洋の東西を問わず、ほとんどの文明の作る暦が「十二ヶ月」で一年としているのが何よりの証拠)。これが、月(「太陽」に対して「太陰」とも呼ばれます)を基準にした暦、太陰暦です。
 この月の満ち欠けを12倍した太陰暦での1年は、およそ354.4日であって、みなさんがよくご存じの1年の長さである、365日(閏年は、366日)とは11日あまり違っています。

 人間が、1年の長さを測ろうと考えるようになった一番の原因は、農耕や狩猟といった社会生活を円滑に営むための手段として、それを利用しようとしたからでしょう。ということは、そこで知りたい1年とは、「季節が一巡りする長さ」です。
 季節の変化は、主に太陽の動き(本当は地球が公転しているわけですが)によって起こるものですから、太陽の動きの周期を「1年」として知りたいわけです。そして、この長さというのは、およそ365.2422日。つまり現在の我々が使っている1年の日数に近い値なのです。

 話を、太陰暦の話に戻しますと、手軽に使えるからと月の満ち欠けを基準とした太陰暦を作った人達は、数年するうちに暦の月日と季節が徐々にずれてしまうことに気付きました。なんと言っても、本当の1年と太陰暦での1年では11日も違っているのですから、太陰暦で3年を過ごすと、同じ月日でも、季節は1月分ずれてしまい、当初は1月が冬だったとしても15年もすると、1月が夏になってしまいます。これでは、
 「3月になったら、田植えの準備を始める」
なんて単純に将来の予定が組めません。なんとかして、暦の日付と季節をつなぐ方法を考えないと。
そして生まれたのが二十四節気です。

●二至二分の誕生
 少しずつ文明が進歩し、天体観測の技術も高度化して、太陽の動きを詳しく記録すると、その動きが一定の周期で繰り返されることが判ってきました。この周期が判れば、これを「1年」とすることで、季節と暦の日付を結びつける何かを作り出すことが出来ると、昔の天文学者は考えました。では太陽の何を計ったのでしょう?

影を測る 誰しも気が付く変化としては、冬になると太陽の高度は低く日は短くなり、夏は昼には太陽が真上からじりじりと照りつけ、日も長いということではないでしょうか。
 このうち、日の長さを正確に計るのは正確な時計が無い時代には難しいことでしたが、太陽の高度を計ることは比較的簡単です。棒が一本と、物差しがあれば(右図参照)。

影を測る2 毎日太陽が真南に来る頃に、棒を地面に立て、その長さを注意深く記録して行きます。少しずつ変化して行く棒の影の長さを測り、その日一番短くなった時の長さを記録します。そして、来る日も来る日もこれを繰り返します(たまの休みは曇りの日?)。
 何年もこれを地道に繰り返して行くと、毎日の最短の影の長さが一番長くなる日(一番短くなる日でも原理的にはOK)から次に再び一番長くなる日の間隔は同じであることに気が付きます。左の図は北緯35度付近で「長さ1」の棒を垂直に立てた時の影の長さの変化をグラフ化したものです。

 さらにこの影の一番長くなる日は、日も極端に短く、寒さも厳しい時期に当たるところから、昔の天文学者はこの日を「冬至」と名付けました。
 同じようにして、棒の影が一番短くなる日は「夏至」と呼ばれることとなります。グラフから解るとおり棒の影の長さは棒の長さの夏至では約0.2倍、冬至では約1.6倍。その差は歴然です。

 冬至と夏至の発見があると、後は雪崩を打って暦の細分化が始まります。
 冬と夏の間には、春と秋があって四季となりますが、ならば、「冬至」と「夏至」の間で、春と秋のそれぞれの季節の真ん中を示すものを作ろうと、「春分」と「秋分」が出来ます。これで、四季それぞれに、季節の真ん中を表す言葉が出来ました。冬至・夏至と「至が二つ」で、二至。春分・秋分で「分けるが二つ」で、二分。合わせて二至二分と呼ばれるようになります。

●四立の誕生
 四季それぞれの真ん中を示す言葉が出来ました。
 真ん中が判れば、冬の真ん中である冬至と春の真ん中である春分の中間は、「冬と春の境目」だと考えることが出来そうです。ならば、この境目で、「冬は終わって、春が始まる」のだとして、春の初めを意味する「春立つ」という言葉が生まれます。これが「立春」です。
 春の初めと同様に、立夏・立秋・立冬もあるわけですから、「立」が四つで、「四立」と呼ばれます。

●二十四節気の完成
 二至二分四立(あわせて「八節」という)が出来て、1年が8分割されましたが、ここで問題が。8分割では1つづつの間隔はおよそ45日。農作業の目安としてはちょっと間隔が開きすぎています。もう少し間隔は短い方がいい。
二至二分また、それまで慣れ親しんだ月の満ち欠けによる1年12ヶ月という解りやすいシステムも活かしたい。さて12ヶ月と八節をどう関係づけたらよいのでしょう?

と困った問題ですが、何処にでも頭の良い人はいるもので、

 「各々を更に3分割し、それを各月に2つづつ配すればいい」

と思いつきました。
つまり、 8×3 = 12×2
というわけです。右の図は、二至二分 → 四立 → 二十四節気という細分化の様子を示したものです。

●太陰暦から太陰太陽暦へ
こうして二十四節気が完成ました。
二十四節気は太陽の動きを示すものですが、これと従来からあった太陰による12ヶ月とも上手く折り合いをつけ(閏月という考えで、この折り合いを付けています)、こうして太陰と太陽との折り合いを付けた暦、「太陰太陽暦」が生まれました。

どんな風に「折り合いを付けたか」について詳しく知りたい方は、
  旧暦の話   旧暦の月の決め方 をお読み下さい。

二十四節気の名前に見るタイプの違い
名称天文暦学気象・動植物
立春  
雨水  
啓蟄  
春分  
清明  
穀雨  
立夏  
小満  
芒種  
夏至  
小暑  
大暑  
立秋  
処暑  
白露  
秋分  
寒露  
霜降  
立冬  
小雪  
大雪  
冬至  
小寒  
大寒  
●二十四節気の名前のタイプ
二十四節気の名前を見ていると、その成因などから、3つのタイプがあるような気がします。思い立ったが吉日と、それをまとめたものが左の表です。
分類項目の「天文」は天文学的な意味のあるもの。
「暦学」は、冬の真ん中冬至と、春の真ん中春分の中間は、冬と春の境といった、暦上の概念と言う意味。
「気象・動植物」は、気象や、動植物、農耕などと関連すると思われる言葉。
と分けてみました。
いかがでしょうか?
この表を見ると、二十四節気は天文・暦学の概念から生まれた八節を骨格として、その間を動植物等と関連する言葉、二つずつで肉付けして出来たといえそうです。

●二十四節気の二つの作り方
 二十四節気を作る場合、冬至から冬至までの日数(太陽の動きによる1年の長さと言えます)を24等分して、それで割り振る方式があり、これを「恒気法」といいます。
 これに対して、太陽の動く道筋(黄道)を角度で24等分して、太陽が太陽がその等分された点を通過した日をもって、二十四節気とする「定気法」があります。計算としては、恒気法の法が手軽ですが、現在官報で公示される暦要綱に記載されている二十四節気も定気法によるものです。
(こよみのページの二十四節気計算はこの定気法によって行っております。)
 また、日本で使用された最後の太陰太陽暦である天保暦もまた、後者の定気法を採用していました。

●二十四節気が季節と合わない?
 これについては、「なぜずれる? 二十四節気と季節感」をお読み下さい。
余 談
二十四節気誕生についてのストーリーは、私の想像の部分もあるのですが、多分当たらずといえども遠からずというほどには、当たっていると思います。たぶんね。
たまに真面目な話を書くと疲れるなと思った今日この頃(2004.10.08)でした。
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